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◎身近な食材で調理を 学校給食に携わる者にとり、夏休み中は食中毒事故の呪縛(じゅばく)から少しだけ解き放たれホッとできるひとときです。しかし家庭では、子どもたちの3度の食事に悩みを抱える保護者の方々も多いのではないかと思います。 私たち栄養士の立場からも、30日以上ある夏休みの間、子どもたちは自由気ままな食事時間を過ごしているのでは―と少々気がかりでもあるのです。心強い回答をする保護者の方もいらっしゃれば、「夏休みは本当に憂うつです」「夏休みも給食していただけないものでしょうか」「早く2学期が始まらないかしら」などとため息をつかれる方々などさまざまです。 家庭における食事の簡便化が一段と進み、外食(弁当を含む)や加工食品などの利用が増加していることが、全国各地の子どもたちの食事調査や、家庭へのアンケート調査などでも報告されています。 食品企業もさまざまな簡便化された商品を開発していますし、食品売り場ではたくさんの種類の総菜が売られ、簡単に家族構成に合わせることができる手軽さが受けて高い利用率になっているそうです。生産技術や流通も驚くほどの向上により、年間を通じて自由に食材が手に入るようになった半面で、季節感や地方色など独自性も薄れ、大人ですらその食材本来の姿や味などもわからなくなり戸惑うほどになっています。 豊かさや便利さを否定するものではありませんが、このような便利さの中で暮らす子供たちは、自分たちの命を支える食べ物がどこでどのように生産され、その料理がどのように出来上がるかわからないまま、目の前に出されることが多いのではないかと思います。従来は野菜を刻む音やあたりに漂う味噌(みそ)汁のにおいで、食事に対する期待感が生まれ、汗して掘ったじゃがいもに塩を振っただけでほおばったゆでたてのじゃがいもに感動することも減ったように思います。 食べること自体に無関心で、食べ残すことに何の抵抗も持たない子どもたちが増えたことを感じています。その土地で季節ごとに収穫したものをそれぞれの工夫で調理し、それを食することで健康の基本を培ってきた先人の知恵を継承することは不可欠です。 普段より子どもたちともふれあう時間が増える夏休み、一緒に身近な食材で調理をする機会をつくってみませんか? 子どもたちは料理をしながら、野菜によって切る時の音の違いや、玉ねぎを切りながら涙しても、いためた時のその甘さに驚き、同じ食材でも煮たり焼いたり料理の仕方で味わいが異なることなど多くの発見をします。夏休み中家庭での1カ月の「食育」集中講座として共に体験していただく時間をつくってください。 (上毛新聞 2009年8月4日掲載) |