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◎高い心身のストレス度 日本では伝統的に、大学医学部卒の新しい医師の多くは大学病院のいわゆる「医局員」となり、医局の諸先輩から診療と研究の指導を受ける。そこで最低限の生活と進路が保障されて、10年ほどで学位も取得。一人前になると、公的大病院の常勤の勤務医として10年以上勤務し、その後、開業し専門医であると同時に地域の家庭医として地域医療に活躍する―というのが典型的キャリアであった。 本県で、地域の中核病院が医師の補充ができなくなり診療態勢を縮小したことが報じられた。2004年の新臨床研修制度導入までの公的病院は、大学の医局に頼り医師を派遣してもらっていたが、大学では働き手の研修医が不足し正規の医師が過重労働になり、診療の維持に支障が出始めたため、外部に供給できないばかりか逆に医師を引き揚げざるを得なくなったのだった。 医師の過重労働は、06、07年にNPO国際エコヘルス研究会が行った首都圏の医師の調査結果でも明らかにされた。常勤の40―50歳代の男性勤務医47人の週平均労働時間は57時間で、週60時間以上労働の医師が51%であった。これに対し、同時期の同地域の大企業製造業会社員227人は、46時間、6・1%だった。常勤開業医95人はそのほぼ中間で、51時間、27%であった。調査は、産業医研修に参加した医師であり、これでも多少ゆとりのある医師集団と推測される。医師は調査協力を得にくいのだが、回答回収率は90%以上で、現在の医師の過重労働の実態を示す貴重な調査となった。 多くの医師はこのほか当直を月に4~5回している。さらにオンコール制とか宅直といって、休日も夜間も緊急の呼び出しに対応できるよう、原則として自宅での待機が要請されている。当直と待機には手当てがつかない。当直明けには普通に勤務する。 わが国の伝統は、チーム診療ではなく「主治医制」である。イギリスの一般診療所は4~5人の医師がチームをつくって交代で勤務するので、診療内容はより標準化され、責任は分散され、労働時間と休日は人並みである。その代わり患者は手術などを数カ月先まで待たされる。 長時間で不規則で過重な勤務のため、寝不足という医師は35%、ストレス状態とする医師は43%と会社員集団の2倍以上。同じ調査で、こうした過重労働のため勤務医は会社員と比べ、「生活不規則」で「いらいら短気」「不定愁訴」が多く、「心身のストレス度」が高いという結果も出た。 心身の疲弊を示すこれらの状態は、責任の重い対人サービスが不規則に長時間続くためと思われる。医師の過重労働は、その家庭生活と必要な研修を犠牲にせざるを得ないものである。 (上毛新聞 2009年7月26日掲載) |