視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
環境こつこつ市民の会会長  松島 規雄(伊勢崎市波志江町)




【略歴】環境こつこつ市民の会会長として、廃食用油や雑古紙の回収啓発活動などを展開。(財)省エネルギーセンター省エネルギー普及指導員。伊勢崎三中PTA顧問。



ヒートポンプ技術



◎大幅なCO2削減効果も




 省エネ家電の中で特に、エアコンのヒートポンプ技術が、地球温暖化対策の鍵を握るものとして注目が集まっています。ヒートポンプの原理とはどのようなものなのでしょう。

 気体や液体は圧力がゆるむと膨張し、熱の密度が下がって温度が低くなります。反対に圧縮すると温度は上昇します。身近な例では、スプレーを噴射し続けると缶が冷たくなったり、自転車の空気入れが熱くなる現象がこれに当たります。ヒートポンプはこの原理を応用し、熱を運ぶ液体や気体(冷媒)を圧縮・膨張させて、「大気中の熱」をくみ上げ、必要な場所に「熱」を運ぶのです。投入する電気エネルギーに対して、3~6倍の熱エネルギーを作り出せるのが特徴で、化石燃料を燃やさずに多くの熱エネルギーを得られる点が温暖化対策に有効とされている理由です。

 この技術を応用したものには、エアコンのほか、洗濯乾燥機やヒット商品となっている給湯器「エコキュート」があります。家電などの民生部門だけでなく、ビル用空調や介護施設等の給湯、清涼飲料用自動販売機にまで広がっています。ただし、工場など生産分野では「工場で使う熱=ボイラー」の固定観念は根強く、ヒートポンプへの置き換えはあまり進んでいません。

 政府の2009年第10回経済財政諮問会議で、太陽光・風力発電と同様にヒートポンプは再生可能エネルギー技術と公式に明示されました。エアコンが省エネポイント対象商品となっている遠因がここにあります。なお欧州連合(EU)では、「再生可能エネルギー推進に関する指令」を含む気候・エネルギー政策パッケージが欧州議会(08年12月)、欧州理事会(09年4月)でそれぞれ採択されました。この再生可能エネルギー推進に関する指令のなかで、ヒートポンプ利用により得られた熱エネルギーを再生可能エネルギーとして扱うことが明記されています。

 では、ヒートポンプを利用するとどれほどの効果があるのでしょうか。オフィスビルや家庭で使われている空調・給湯だけで年間1億5千万トンのCO2が排出されています(02年度実績)。これらすべてが高効率ヒートポンプに置き換わると、年間約1億トンものCO2の排出抑制が試算されています。この1億トンという量は、京都議定書目標達成計画における民生部門の削減目標(6千万トン)の1・5倍に相当します。また、単にCO2削減のみならず、空気熱利用により4500万キロリットルもの原油消費を代替するという純国産資源の開発効果もあるのです。

 暑さも本番を迎えていますが、エアコンを購入する際にはできるだけ高効率機器をお勧めします。家計にも環境にも優しいはずですから。




(上毛新聞 2009年7月25日掲載)