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NPO法人あそびの学校代表理事  山崎 茂(藤岡市三波川)




【略歴】東京都出身。中央大卒。埼玉県富士見市職員を経て、2001年、藤岡市(旧鬼石町)に「三波川ふるさと児童館・あそびの学校」開設、07年、子供の遊び場開設。




変化するあそびの環境




◎子ども本来の生活を





 私は、子どもたちから「泥だんごのおっちゃん」、略して「おっちゃん」といつも呼ばれている。あそびの学校名物「光る泥だんごの色あそび」にかけてのものであるが、同時に私が、色が黒く顔が丸く泥だんごにそっくりということもあってのことである。

 なぜか、私は小さい時から色が黒く、小学生の悪友がつけたあだ名は「ダッコ」(当時大流行のダッコちゃんをもじって)。高校の時は、運動部の先輩に「おい! 海辺の少年」と呼ばれたこともあった。

 しかし、今では妻から「本当に天職だわ。顔は泥だんごそっくりだし、頭の光っているところは泥だんごのつやと同じ」と言われる始末である。

 この「泥だんご」、30年以上も子どもとあそびにかかわってきた私が驚くほど、子どもはもとより大人もはまるあそびである。

 しかし、このごろは「初めて泥だんご作るんだよ」という子ども(親も)がとてもいて、この点でもあそびの環境に驚くことが多い。

 「なぜ子どものあそびに大人がかかわるのか?」とよく質問を受ける。その時私は、昔から大人に「よく学べ、よくあそべ」「子どもの生活の大半はあそびである」「子どもはあそびを通して育つ」と子どもに言ってきた。本当にこのことが守られていれば、今の子どもは思う存分あそび、充実した生活を送っていたはずである。そして、あそびも子どもから子どもへ「伝承」されるはずである。

 しかし、今の子どもは、社会環境の急激な変化(あそび時間、あそび場、あそび仲間の喪失や子どもをターゲットとする12兆円にも上る子ども市場等)により、子ども本来の生活が阻害されている。

 だから、どうしても私のように大人が、子どもの目線(立場)で子ども本来の生活やあそびを保障するためかかわらなければならなくなる。

 実際、あそびの学校が3年前から藤岡市の古民家に開設している駄菓子屋付きのあそび場では、子どもの目線で、桜の木の上に基地がつくられ、あちこちに穴が掘られ、こま板やベイゴマ床、泥だんご場が並び、土蔵の部屋では、のんびり駄菓子を食べながら漫画やカードができるスペースがある。「おっちゃんここは天国だ」と言うのも当然である。もちろん入場無料で私は一銭にもならない。それを察して、子どもは「ホラ! おっちゃん、ヤングドーナツ」と駄菓子をおごってくれる。「子ども市場」とは天と地の差である。

 私は、子どもから「おっちゃんはいいな、毎日あそんで暮らしているんだから」とよく言われる。その時、「茂! 遊んでばかりいないでたまには勉強しなさい」と母から怒鳴られたことをふと思い出した。




(上毛新聞 2009年6月27日掲載)