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特定非営利活動法人エコライフ理事長  石関 和泰(下仁田町大桑原)



【略歴】宇都宮大大学院修士課程(農学専攻)修了。国際農業者交流協会欧州支部長などを経て、下仁田町の日台農業振興会で業務部長。



自然体験活動



◎命の大切さ学ぶ機会に




 私たちは子どもたちに対して自然体験活動を行っています。これは、自然の中で遊んだり、学んだりするのが極めて自然であると思うからです。しかし、そのような体験をしない子どもたちが増えていることは残念です。なるべく多くの子どもたちに自然に接してもらいたいと思います。

 私は自然について、現代の子どもたちに理解してもらいたいことがあります。まず、自然は共存共栄の世界であることです。自然を構成するものは互いに関係し、それらは神秘的な世界を有しながら調和を保っています。自然界には独立した個もなければ、無価値な個もありません。それぞれが特徴を活(い)かし、尊い命を大切にして生きているのです。

 次に、自然界には愛情が存在することです。動物の求愛行動や、雛(ひな)に餌を運ぶ親鳥、母乳をあげる母親、子どもを外敵から守る親など、いずれも愛情の表れです。生物はより高度に、より複雑に進化していますが、見方を変えると愛情がより深くなる方向に進化したとも言えるのではないでしょうか。

 特に人間は他の動物と違い、愛情を十分に表現し、また感じることのできる存在です。子どものころに自然を相手に愛情を注ぐ経験をしたり、命の大切さやはかなさを知ったりすることは、大人になるための大切な過程だと言えます。

 それから、自然は正直だということです。特に生育条件の厳しい地域ほど、自然はその環境を正確に反映しています。自然を理解していくためには、自然に接し、自然について考えるという繰り返しが必要ですが、正直な目で自然を見ると、見える範囲も広がり、興味も深まります。

 私はかつて植物から「ここに生育しているから見て」と語りかけられていると感じたことがあります。このような経験は一度だけですが、人間にも自然にも、目に見えない面があります。人と自然の心が一つになった時、両者で会話ができるのではないかと感じます。

 最後に自然は国境を超えるということです。世界では民族、宗教等に起因した争いが続いています。相手に対し非寛容であったり、自分たちを絶対的とみなしたりすることなどが原因ですが、それらはいずれも心の問題です。しかし、自然に感動する心は人類共通です。これは本来、人類は分かり合える存在であることを示しています。偏見や誤解を無くし、相手を正しく理解していこうとする姿勢を持つことの大切さを知ってもらいたいと思います。

 自然は一朝一夕にしてできたのではなく、宇宙の英知が結集しています。次世代を担う子どもたちにとって、自然から学ぶべきものは多いと言えます。





(上毛新聞 2009年6月9日掲載)