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県農業法人協会長  武井 尚一(富岡市宮崎)




【略歴】高崎商高卒。脱サラし、1989年から農業に従事。98年に有限会社「武井農園」を設立、農産物のブランド化などに取り組む。富岡市認定農業者協議会長。



農業の体質強化



◎JAに必要な大改革




 政府は2006年、国産食料の国際競争力をつける目的で、農業の体質強化の取り組みを始めた。経営力の強化を図り、消費者に低価格食糧の供給をし、需要の喚起を起こすことを狙っている。5年で2割のコスト縮減の目標を掲げ、「食料供給価格縮減アクションプラン」を策定して、JA、市場、農薬、農機具資材メーカーなどに働きかけている。

 その内容を見ると、農業関連企業が自己の利潤を確保したなかで、生産者に資機材を供給しているのでは、農業経営は競争力を失い、高い国産農産物離れを加速させてしまい、ひいては関連企業も首を絞める結果となりますよ、と読み取れる。

 その中でJAは、大資本に対抗する目的で農業者が組織した団体で、農家に肥料9割、農薬機械6割、コメを含めて農産物の販売委託5割の利用率があり、まさに農業経営に欠くことのできない組織である。

 しかし農水省から、資材供給価格、コメを含めた販売手数料などの高さや努力不足が指摘され、06年から業務改善命令が出され続けている。この事実は大多数の農家出資者は知っているか疑問だが、商系の資機材供給店や農産物集荷業者が数字を伸ばしている現実からして、強力な経済事業等の大改革が急務となっている。

 農協協会の07年版大規模経営体意識調査を見ると、経済、金融事業などすべてにおいてJAの存在感の喪失が徐々に進んでいることが分かる。土地利用型農業はまだJAとの結びつきを保っているが、JAとの取引が有利と判断する限りのことであり、積極的に選択し期待する声は少なかったと結論づけている。このことは、出資者の農家自身も関心を持たねばならないし、より良い農協運営を求めていくことで、生産コストの縮減につながり、自身の経営力強化にもつながる。

 今回の農政改革は大方の予想を超えて、大規模経営体育成に向け大きく舵かじを切ろうとしている。その中でJAは経済事業をはじめとした諸事業にあたり、大規模経営体の要望や期待を真しん摯しに受け止め、早急に改善を加え、率先して経営体の育成と競争力を高めなければならない立場にあるはずである。農水省は、2015年には効率的な農業経営体が約40万戸になると展望しており、これは現在の農業経営体が約10分の1しか生き残れないことも意味している。

 JAは、基盤となる農業経営体が縮小することはすでに織り込み済みで、これに備え1年前からタック(農業者とJAの緊密性を高め指導していく部署)を設けたが、まだまだ緒についたとは言いがたい状況だと私は見ている。長い歴史のなかで多くのノウハウや指導力を持ったJAに期待することは大きい。






(上毛新聞 2009年6月4日掲載)