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◎社会の信頼得て浸透を 犯罪が発生した場合、警察が迅速に対応し、犯人検挙等の捜査を行うが、警察は被害者についても第一次的な対応を行う。被害者に対しては、捜査目的以外にも傷ついた被害者のケアの必要性が認識され、実践されるようになった。以前、大阪の池田小事件の遺族の話を聞く機会があったが、混乱する遺族に被害直後から女性警察官が付き添い、買い物からカーテンの開け閉めに至るまでこまやかな支援を受けて大変助かったと話されていた。 被害者に対する支援はそのニーズに応じてなされる必要があるが、それもできるだけ早期に支援に通じた人の手によって行われることが望ましいとされる。被害直後の支援(危機介入、応答)は、従来は警察だけが対応したが、これからは民間の支援員が活躍する場となり、また、使命ともなり得る可能性がある。 実際、欧米では、民間支援団体による被害直後からの支援活動が極めて盛んに行われている。例えば、アメリカでは、州によっては民間の支援員がパトカーに同乗し、犯罪発生の知らせを受けると警察官と一緒に現場に赴き、被害者に対する支援を開始する。また、イギリスでは、犯罪が発生すると、警察署から同地区にある民間支援団体(ビクティム・サポート)に2日以内に報告が届き、報告を受けた支援員が被害者に手紙や電話で連絡を取ることで支援が開始されており、いずれも大きな効果を上げている。 被害者は、被害を受けると、時に孤立感や疎外感に打ちのめされるが、同じ目線に立つ支援のまなざしを不断に感じることで苦痛を和らげ、混乱を乗り切るきっかけをつかむことができるのである。民間支援の意義はここにある。 被害者に関する情報は捜査情報であるとともに高度な個人情報でもあり、被害者の意志を離れて利用されてはならない。他方、民間支援団体には、そうした情報を的確に管理し、秘密を守った上で必要な支援を行える態勢を組めることが求められる。そして、わが国においては、公安委員会が「犯罪被害者等早期援助団体」に指定した民間支援団体に、被害者の同意を得て、警察からの被害者情報が直接伝わる仕組みができている。これにより、被害者が望めば、被害発生直後から民間支援団体よる支援を受けることはできる(公安委員会が指定した民間支援団体は全国に20ほどあり、群馬の「すてっぷぐんま」はその1つである)。 今後、民間支援団体が被害直後から被害者の支援を開始する機会は確実に増えるし、こうした活動を通じて民間支援に対する社会の信頼を得て、浸透し、ゆくゆくはイギリス型の被害者支援に発展させるのが望ましいと考えている。 (上毛新聞 2009年6月2日掲載) |