視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
NPO法人手をさしのべて理事長  桜井 信治(高崎市寺尾町)




【略歴】県内22団体で組織する不登校ひきこもり支援団体ネットワーク代表。学習塾グローイング代表。高崎市まちづくり市民会議、県教育問題県民懇談会の各委員歴任。



いいかげんの使い分け




◎楽な気持ちで子育てを




 大ざっぱを意味する「いいかげん」と適度な状態をさすいいかげん」の使い分けは難しいですよね。私は仕事柄、カウンセリングや子育てに関してのアドバイスをし、また自らの子育てを行っていますが、特にメインの仕事である不登校ひきこもり支援に関しては、本当にこのことが大切だと思っています。

 カウンセリングに関しては日々勉強していますので、それなりの知識もありますし、何よりそれに勝る経験があります。相談者の大半は初めは親からの相談になります。それも私より年上がほとんどです。そんな中、一番に感じるのが、やはりどの家庭も親は子供のことを真剣に考えていて、一生懸命子育てをしているということです。皆さんに点数をつけるなら百点をつけてあげたいくらいです。でも相談は後を絶ちません。やはり真剣になりすぎているからなのではないかと感じています。

 私も現在三児の父親です。子供のことに関しては真剣になってしまいます。でも、子供はどうでしょうか? そこまでの思いを常に受け取り、行動しているでしょうか? 子供が小さければ、当然親にすがってきますが、ある程度の年齢になってしまえば親から離れていってしまいます。これって自然の摂理ですよね。いつまでも親離れできず、子離れできないのも、やはり子供が社会に出るためには問題ですからね。

 そこで私は感じています。子供って、社会の中で勝手に育っていく面が多いのです。幼稚園や保育園に行くようになると、教えてもいない言葉を覚えて来たりと、成長を一番に感じられます。子供は社会からたくさんのことを教わっているのです。それを考えると、親が子供に出来ることって、限られていますよね。そうなると、ポイントポイントでは、親の支援が大切ですが、人生の大半は社会の中で育っていくもので、いいかげんでも良いのではないでしょうか? 

 子育ては正解も不正解もないと思っています。また、何人子供を産んで育てようが、一人一人が違いますから、毎回一から試行錯誤しながら行っていくしかないのですよね。その子にとって初めての子育てになるわけですから、楽しんでほしいと思います。

 いいかげんといいかげんをどう使い分けるか、難しいことですが、楽な気持ちで子育てを行っていけばうまくいくのではないかと思います。いいかげんでもいいのですよね。子供にとって、いいかげんならば、そして親にとってもいいかげんと考えることができれば。

 子育ては場面、場面で悩むことが多いものですが、準備して身構えるよりも、その場面になってからゆっくりと考え、いいかげんを選択することができれば本当に楽しいと思います。





(上毛新聞 2009年5月18日掲載)