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◎自立のため生活改善を 二〇〇〇年四月、介護保険制度が始まった。当初の理念は「高齢者の居宅での自立した生活を目指すこと」だったが、〇六年四月の制度改正により、「要介護状態を避けるための予防重視型システム」へと変わり、要介護予備軍にならないように普段から生活の改善を心がけていくことが求められるようになった。 病気と老化を予防するには、食生活や運動だけでなく、高齢になってからの学習や地域社会活動(ボランティア)も有効になる。学習に励むことは、認知症予防に役立ち、知識を満たすための向上心が人間らしく生きようとする意欲を働かせる。人生で培ってきた知識や能力は、さまざまな場面で人から喜ばれ頼りにされ、必要とされる。これを生かしてやりがいや生きがいを持つことが、充実感を生むことにつながっていく。 要介護状態の高齢者の場合、本人のやる気を尊重し、大事にしすぎないことだ。たとえば、風邪(インフルエンザ、肺炎)、転倒(骨折)等で寝込んだとすると、その状態が治ってもベッドの生活に慣れてしまい、そのままになってしまう。本人も楽なので、家族に頼りきりになり、体を動かさないので、筋肉が衰え、ますます動けなくなる。その悪循環で寝たきりになってしまう。これが「廃用性症候群」と呼ばれている。 頭の部分も同じで、自分で考えなくなるから脳の機能も衰え、認知症が進行してしまう。家族が本人のためにと思って手をかけていることが、かえって自立のための訓練を奪っているのだ。本人ができることは本人に任せることが大事であって、それは能力や筋力の維持になり、認知症の進行も防ぐのである。 見守っていく姿勢を忘れずに、本人の自尊心も満足できるようにいろんなことを任せることだ。それができたら、家族も褒め、感謝する。日常生活の中で高齢者に自立した喜びを持ってもらうこと、家族の役に立っているという意識を持って接することが一番だ。 高齢者が要介護になったとしても、「自分で食べたい」「トイレに行きたい」「着替えをしたい」「散歩をしたい」などの目標を持つことにより、体も心も元気な方向に進んで、家族の介護も軽減されてくる。介護する側の心の余裕が失われてくると、少しのことでいら立ったり、感情が抑えきれなくなってくるので、家族が共通の認識をもち、一緒に担っていくという相互理解が大切なのである。 高齢者に対しては人生の先輩として敬意を持って接するよう心がけ、高齢者の心を受けとめる余裕を持つようにしたいものだ。 (上毛新聞 2009年5月17日掲載) |