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◎発見し、価値共有を 自分の住むまちには、朝昼夕夜、春夏秋冬、種々の天候を問わず、五感で味わうことのできる場所が必ずあるということ、そのような出合いが保証されるということは、日々の生活を楽しむ上でとても心強い。そういう場所は「発見」しておかねばならないのだが、そのためには、見つける「目」が必要である。身につけるためのレッスンとは、たとえば身近な川や池、涼を求め、日だまりを楽しむ緑地、四季折々の花の名所、日の出や夕映え、雨や雪や風や霧、などに目を凝らせばよいのである。その時、ここが肝心なのだが、一人一人が見つけ、自分しかわからない秘密の場所も面白いが、集団で暮らすなら当然のこと、その場所を共有しその良さを分かち合うことが歓迎されるのである。 発見だけでなく「場所づくり」も欠かせない。簡単に言えば場所のデザインのことである。ただし、デザインといっても、いわゆる空間設計ではなく、五感の相乗効果を期待する感覚環境の設計である。しかも地名の活用や名称付けなど、新たな意味の生成を狙った言葉のデザインをも含んでいる。 ところで、おのおのの場所で独自の個性を持たせるデザインは、それはそれで意味があるが、ここでも注意しなければならないことがある。それは、そのデザインが一定の期間だけ効果があればよいものでもなく、その場所だけで閉じた効果であってもならないということである。つまり、デザインの答えを出すにあたっては、その場しのぎではなく、おのおのの場所がまち全体の中でどのような意味を持つのか、その場所が時間経過に伴ってどう変化しそれにどう対応するのか、という意識を常に持たねばならないのである。要点は、個別の場所からまち全体へという空間の広がりにかかわる側面と、場所の継承という時間の流れにかかわる側面である。 ふたたび強調するが、市民が場所の価値を共有しその配置計画に参画すること、さらに一定の水準を保ちながら維持管理するという姿勢を持ち続けること、これが肝要なのである。そしてその積み重ねこそが、将来、子供たちに残す大切な知的文化資産となるのである。 まちづくりと言うと、とかく「見劣りせず」「見栄えがよい」などに目が奪われがちであるが、ここで言うまちづくりとは、ゆっくりとじわじわ効いてくる温泉の効能のようなまちづくりである。訪れる者への「挨あい拶さつ」や「もてなし」の道具ともなるこの効能が穏やかな暮らしを支えてくれるはずである。 (上毛新聞 2009年5月6日掲載) |