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◎悲しい猫増やさないで あれは寒い冬の午後のこと。前橋の敷島公園を歩いていたら、枯れ葉の中から顔だけ出している子猫が五匹もいた。私をじっと見つめているのである。一匹など、近づいてきて路上にかしこまるように座った。「連れてってください」って言っているようなまなざしだった。 ごはんをあげたい。でもそれが本当によいことなのか、と一瞬立ち止まる。キャットフードをたくさん買って、そこに置いてあげたい。自宅で飼えるのなら連れ帰りたいが、すでに二匹の犬を飼っているから、それもできない。 今ここでごはんをあげることが、この子たちの幸せにつながるのか、自問自答を続ける。一生かけて面倒を見ることができる環境と覚悟もなしに、一時の情けをかけることは、決してその子のためにはならない。 子猫は生後八カ月ほどで大人になる。メスの子猫は、生後十カ月になれば子供を産める。妊娠期間は二カ月、二~八匹の子供が生まれる。子猫が離乳すると、母猫は発情する。そうやってメス猫は六カ月おきに子供を産み育てることができる。 こんな計算がある。1匹のメス猫を不妊しないで養うと、一年後には子猫が二十匹。二年後には八十匹を超えてしまうのだ。オス猫も大人になると尿がオス臭くなり、独特の泣き声になったり、けんかや交尾でエイズやガンなどの病気に感染したり、けがをしたり。 だからメスの不妊手術、オスの去勢手術は大切な課題だ。 「それって、人間の勝手な都合では?」 よく聞かれる。でも、人間の手に負えないほど猫が増えてしまったら、どうなるか。野良猫が増え、ついには保健所に。その先に待つ運命は……。「不幸な運命をたどることが分かっている命」を無責任に増やすことは、結局猫たちにとって悲しいだけのことなのだ。 それにひきかえ、不妊手術には「発情期のストレスがなくなり、一年中おだやかに暮らせる」「妊娠・出産の肉体的負担がなくなる」「交尾によって移る病気の不安がなくなる」などのメリットがある。去勢手術でも「尿のオス臭さがなくなる」「発情期の鳴き声がなくなる」「外出やケンカの衝動がなくなり、おだやかに暮らせる」などのメリットがある 捨てられた猫を見て、かわいそうにとごはんをあげたい気持ちは、誰もが持つ。でも、もう一歩先を考えてほしい。悲しい存在を生み出さないためにはどうしたらいいのか、と。 だから、私たちの協会は「不妊・去勢の大切さ」について声を大にして訴えているのだ。 (上毛新聞 2009年4月27日掲載) |