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リージェンシーグループ代表  長谷川 清美(東京都渋谷区)



【略歴】館林市出身。大手旅行社を経てヨーロッパ専門旅行会社「リージェンシーグループ」を設立。海外挙式にも着手、現在十数カ国での日本人挙式をコーディネート。


ヨーロッパの温泉文化



◎生活様式の違い理解を



 桜の季節もほぼ終わり。この時期、花冷えとはよく言ったもので、日が落ちてからの急な冷え込みに身震いしながら家路についた経験をした人も少なくないことと思います。そんな時、疲れて冷えた身体を癒やすのは「お風呂」。温かい湯船にどっぷりつかって一息。何にもまさるくつろぎのひとときです。そして「温泉」に行くことは、何よりのリラクゼーションです。

 もちろん温泉は海外にもたくさんあります。でもほとんどが水着を着て入るスタイルです。古くから温泉地として有名な南イタリアのイスキア島は、ナポリから高速船で一時間弱、至る所から温泉がわき出している島です。三百以上あるホテルの中には治療センターを併設している所が多く、まず医者の診断を受け、症状に合わせたプログラム(泥浴、吸引、温泉浴等)に沿って医学的な疾病治療が行われます。

 私が訪問した時は東欧圏からの人々が一カ月近く滞在していました。最近では、エステやマッサージなどを目的にした施設も増えています。いくつもの温泉プール、洞窟(どうくつ)サウナ、レストランなどを完備した巨大な温泉テーマパークは家族連れに人気があるようです。天然露天風呂もありますが、もちろん水着着用。体をほぐすというより、なぜか肩が凝ってしまったのは、私の水着がきつかったせいでしょうか? やはり生まれたままの姿で入る日本の温泉のほうが、ゆったりできるような気がします。

 風呂に入る、風呂につかるというのは日本人にとって当たり前ですが、海外ではそうはいかないようです。海のリゾートホテルなどでも、スイートルームでさえシャワーしかないという所が少なくありません。日本では料金の高い部屋にバスタブ(浴槽)がついていないことはあり得ないでしょう。しかし彼らにしてみれば、ためた湯の中に汚い体をつけているということは非常に不衛生。シャワーのように常に新しい水で洗い流すほうが清潔ではないですか? というのです。また、海のリゾートと言えば夏はかなり暑い場所です。そんな中で熱い湯につかるなんて心臓に悪いでしょ、とも言っていました。

 バスタブのない部屋が最低だと思い、シャワーしかないとすぐ文句を言うのも日本人。できれば、こうした現地の人々の考えもぜひ知っておいてほしいと思います。世界各国、現地での慣習の違いなどでびっくりすることも多いですが、生活様式の違いなども初めからわかっていれば何も問題はありません。むしろ、そうした国や地方によって生活や考え方が違うのを知ることも旅の楽しみかもしれません。旅のシーズン到来、ぜひ楽しい旅をなさってください。





(上毛新聞 2009年4月19日掲載)