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沖縄料理研究家  高山 厚子(東京都練馬区)



【略歴】沖縄県出身。琉球大卒。東京都内の小学校長を経て、現在、三鷹市教委非常勤。料理をテーマに執筆、講演活動。著書に『緑のカーテンの恵みを食べよう』がある。



人生を広げる出会い



◎自ら機会をつくって



 一九九〇年、新聞の片隅に、大手企業の役員人事を見つけました。「化粧品を扱う会社なのに、女性役員がたった一人?」と不思議な気がして切り取り、手帳に張り付けました。

 二〇〇〇年、「男も女も度胸と愛嬌(あいきょう)」というコラムが新聞に連載されました。執筆者は、あの「女性役員の方」でした。

 当時校長として勤務していた板橋区立金沢小学校の近所に美容学校があり、直営の美容室が一般にも公開されていました。私も利用するようになったある日、担当した美容師に連載の記事のことを話したら、「今、この美容学校の校長先生ですよ。本も出版されています」とのこと。思わず、「ぜひその本を読みたい」と言いましたら、学校へと走っていき、一冊の本を抱えてきました。「校長先生が差し上げるそうです」と。

 その日はお会いできませんでしたので、私は、心を込めてお礼状をお送りしました。

 それからしばらくたったある日、秘書の方から「どうぞ校長室へおいでください」とのお電話が入り、私は、お土産代わりに校庭の片隅に生えているネコジャラシやペンペン草をラッピングして訪問しました。

 「まあ、こんなすてきなお花をいただいたのは初めてです」と満面の笑顔で出迎えてくださったのが、宝塚の麗人のような人、資生堂美容技術専門学校長の永嶋久子先生でした。海外生活二十七年、世界三十四カ国を回り、資生堂の海外での基盤を作った伝説の人との出会いでした。公立小学校と企業の専門技術学校との違いはありますが、人を育てる基本は同じです。共感し合うことがいっぱいありました。

 人生は出会いによって広がるといっても過言ではありませんが、十年前の小さな記事が先生との出会いを生み、その後の私の人生の幅が広がりました。

 新年度が始まり、新一年生や新社会人にとっては、人生の岐路をも左右するさまざまな出会いが生まれます。「出会いの機会は待つものではなく、自分からつくるもの」と私は考えます。しかし、出会いを後押しするのは、教師であり、先輩や上司でもあります。人の心を育てられる学校や企業こそが、この混沌(こんとん)とした社会を乗り越えられると信じます。人の心を育てることは、やる気、希望を持たせることなのです。

 その第一歩は、小さな当たり前のこと、あいさつ一つからも生まれるものと信じます。





(上毛新聞 2009年4月17日掲載)