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◎“夢の土地”確認し合う 二月十八日から三月六日までの約二週間、母を連れてブラジルへ行ってきました。滞在したのは、二〇〇〇年から二年間留学した土地である、リオ・デ・ジャネイロ州のコパカバーナ地区。留学に反対だった母は少しずつ理解を示してくれて、今回初めて一緒に訪れました。 リオの空港に着いた瞬間、じんわりとした熱い空気に体を包まれます。二十四時間のフライトで、青森の真冬からリオの真夏に飛び込んだ母の第一声が「すごい! 飛行機に乗ったら夏になっちゃった!」。 それから母は休むことなく大はしゃぎでした。海岸沿いにホテルが立ち並ぶ景色が信じられないようで、「大丈夫、ブラジルは地震がないから津波の心配もないのよ」と言ってあげました。内証でコパカバーナビーチ沿いのホテルを予約していたのですが、部屋に到着しカーテンを開け、真っ白な砂浜に続くオーシャンビューを見た時、母は「夢みたい!」と心から喜んでくれました。 ブラジル人の友達と一緒にリオのカーニバルにも出場しました。強烈な光を浴びながらパレードのメーンストリートへ入ると、信じられない数の観客たちが私たちを迎えます。脳天を震わす魂の音楽、色彩の海、激しく美しいダンス、地響きのようなパーカッションのリズム。衣装の重さも忘れ、一心不乱に踊り、リズムの波と光の渦に体を委ねていると、自分の鼓動が聴こえてきます。「私は生きているんだ」とシンプルに感じ、興奮と感動で熱い涙が出ました。隣を見ると、出場チームのテーマ曲すら覚えていない母も見よう見まねで歌い、両手を広げて、サンバのステップを踏んでいました。母は私に気付き「ブラジル最高!」と叫びました。 ブラジル滞在中、友達に会ったり、ライブに行ったり、観光をしたり、ビーチで寝たり、自分が通っていた大学へ行ったり、のんびり過ごしました。七年前と変わらないコパカバーナ地区の独特なにおい、おいしいフルーツジュース、優しいブラジル人たち。帰りの飛行機の中、滑走路から離陸する瞬間、「お母さん、ありがとう」と言いました。母は「美晴も親になったら、子供の夢を応援してあげなさい」と言って涙を流しました。ああ、母は私をブラジルに連れて行きたかっただけなんだと、分かってまた号泣してしまいました。 私が大泉町に引っ越していなかったら、母とブラジルへ行くこともなかったでしょう。九年前、お願いだからブラジルへ行かないでと私を抱きしめた母。親不孝でごめんなさい。だけど本当にありがとう。母もまたブラジルを夢見て大泉町を訪れる一人となったのでした。 (上毛新聞 2009年4月15日掲載) |