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◎経済動向で一進一退 今回から、身近にできる省エネルギーについて考えてみようと思いましたが、省エネルギーは、経済という大海に漂う小舟といった感が強いということについて、ちょっと触れたいと思います。 昨年十一月十二日、環境省は二〇〇七年度の国内における温室効果ガス排出量速報値を発表しました。それによると、国内の総排出量は十三億七千百万トン(CO2換算)で過去最高を更新しました。部門ごとでは、産業部門が前年度比3・6%増、業務部門が1・2%増、家庭部門が8・4%増、運輸部門が1・6%減という結果でした。 前回、「民生・運輸部門のエネルギー消費は伸び続けている」と説明したのにどうしたことでしょう。要因の一つとして考えられることは、昨年夏まで続いた原油価格の高騰です。〇七年度の年初は一バレル約六十ドルだった価格が年末には九十ドルまで達して、〇八年七月十一日に百四十七ドルでピークに達しました。この原油高は運輸産業にとって大きな影響を及ぼしたのは言うまでもありません。 また、原油価格高騰はアメリカをはじめ先進各国で原発の新増設機運を蘇生(そせい)させただけではなく、太陽光発電生産が世界的な増産ラッシュ時代を迎えています。ところが、先に記述したとおり百四十七ドルになった原油価格は十一月十八日には五十四ドルに下落し、三年半前の水準になってしまいました。不安定な原油価格の影響は国際経済・金融全般にわたりますが、エネルギーでは脱石油、脱化石燃料の動きのブレーキになっています。 原発や太陽光発電に限らず、農業のうち、施設園芸といわれているハウスによる花き、果菜類栽培においても、重油ボイラーによる暖房から、施設園芸用ヒートポンプ(電気熱源のエアコン)に転換を図る農家が増加しました。農林水産省や経済産業省も燃油高騰対策や省エネルギー普及促進のため、このような施設園芸用ヒートポンプの導入補助事業を展開していますが、燃油価格の急落により補助事業の申請を取り下げる方々が多いと聞きます。補助事業とはいえ、設備投資費用の半分は自前で確保しなくてはなりませんから、使えるものは使え、明日の省エネルギーより今日の生産だということです。 また、廃天ぷら油をBDF(バイオディーゼル燃料)に転換しているNPO法人では、軽油価格が急落したためBDF価格も下げるようにと要望を受けているそうです。BDFを採用している団体は、リサイクルの背景を知っていて使用していると思われるのですが。このように経済動向により、一進一退しているのが省エネルギーの現状です。 (上毛新聞 2009年4月4日掲載) |