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◎多様な楽しみ方を 二月八日から八日間の日程でハンガリー、オーストリアへ視察研修に出掛けてきました。研修の目的は「伝統的な産地における、地品種を生かしたワイン造りと産地形成」です。 ハンガリーといえば、三大貴腐ワインの一つである「トカイアスー」が有名です。品種はフルミント、ハールシュレベリュ、イエローマスカットなどを使用しています。どれも国際的な品種ではなく、いわゆる地品種です。中でも貴腐菌が繁殖しやすいフルミントが生産量の大半を占めるということでした。大手傘下にあるワイナリーとセラー、独立した小規模ワイナリー、有名生産者の畑などで試飲見学。現地で担当者から「十三世紀にはすでにワイナリーの存在が確認されています」などと紹介され、歴史の奥行きに驚かされてばかりでした。 オーストリアでは大手ワイナリーと地場消費の観点から、ワイナリーが経営する居酒屋「ホイリガ」で地品種グリューナーフェルトリーナーを使用したワインと食事を楽しみました。ここでの体験は、ワインツーリズムのホスピタリティーに生かすことができそうです。 さて、日本にも固有品種と呼ばれるブドウやそれに準じる地品種がいくつかあります。勝沼では甲州種がそれに当たります。日本を代表する品種といっても過言ではないでしょう。しかし、この品種は甘口から辛口まで造られる上に樽(たる)熟成されるものや樽醗酵(はっこう)、シュールリー製法などがあり、消費者には特徴がとらえにくいところがあります。 数年前までは甲州種ワインのスタイルの早期確立が求められていましたが、ここ最近は多様性を歓迎する声をよく聞きます。これが日常的なワイン消費が浸透していった結果であればうれしいですが、ワインの入り口で多くの人が敬遠してしまった結果だとしたら問題です。 ハンガリーで「アスー(貴腐ワイン)」はおめでたい日に飲むという話を聞きました。うれしい出来事という程度らしいですが、普段はもっぱら辛口ワインだそうです。それらはどちらもフルミントなどの地品種ワインです。上手に飲みわけているわけです。 国際的なブドウ品種というのは、その名前を聞いただけで味わいがイメージできなければいけませんが、地品種はいろいろな味わいを楽しめるのが特徴といえるのではないでしょうか。 料理に合わせてワインを選ぶことも大切ですが、その日の気分でワインの甘辛を変えるだけでもワインの楽しさは広がってゆきます。多様性のある地品種だからこそできる楽しみ方だと思いませんか。 (上毛新聞 2009年3月10日掲載) |