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群馬ダイヤモンドペガサス副代表  広瀬 雅美(高崎市岩押町)



【略歴】 明治大卒。元高崎青年会議所理事長。2007年から現職。ヒロパックス専務取締役。高崎間税会常任理事、高崎法人会青年部理事、高崎交通警察モニター。


スポーツ界の危機



◎信念もち続け、挑戦を




 二月九日、日産自動車が業績悪化のため、運動部を休部にすると発表した。野球部は、都市対抗では二回の優勝経験もある名門で、NPB(日本プロ野球機構)にも多くの有名選手を輩出している。日産自動車は、以前、業績不振で就任したカルロス・ゴーン社長が、企業の再建策として、工場閉鎖と大幅なリストラを断行したが、その際でも、「社員の求心力、モラルの高揚、宣伝・広告」を目的として、運動部を存続させていた。いかに今回の事態が深刻か、うかがい知れる。このことは象徴的な出来事で、近年のスポーツ界は大きな危機を迎えている。

 今までスポーツ界を支えていた学校や企業などは、その基本が、少子化や経済状況の変化により、大きく崩れてきている。サッカーのJリーグがそのような背景の中、地域住民・企業・行政の連携による「三位一体主義」でスポーツ界の改革を推進しているが、それでも経営は厳しい。また、プロスポーツ界では、多くの人材が海外に流出している。今、いろいろな側面からスポーツを考え直す時期に来ている感じがする。

 スポーツは、本来、生涯スポーツという観点から見れば、その活動を通して、人生における健全な生活、人々との豊かな出会いや交流、大自然とのふれあいなどにより自己実現を可能にするという文化的特質も持っている。このような文化的な性格をさらに洗練していけば、スポーツは生活の質を高め、人生の充実を実現する重要な活動である。それが社会制度などの変化によって廃れることだけは避けたい。

 また、スポーツを通して、多くの人々を感動させ、勇気づけ、元気にさせる効果も極めて重要な要素である。昨年の北京オリンピックでの女子ソフトボールや水泳の北島選手の金メダルなどはその事例ではないか。

 われわれ群馬ダイヤモンドペガサスは、球場の入場料・スポンサー・後援会会費・グッズ売り上げなどの収入で運営しているが、まさに二年目の厳しいスタート台に立っている。群馬ダイヤモンドペガサスは、独立リーグプロ球団としての野球の興行だけでなく、地域密着型県民球団として、群馬をさらに活性化させたいという夢を持っている。また、将来有望な人材を育成するという教育的な役割もある。厳しい経済状況だからこそ、私たちが何をするべきかを真剣に考え、ひた向きに取り組みたい。球団設立時の信念を愚直に持ち続け、あらゆる可能性に挑戦することにより、いつか群馬県民に真に愛され、必要とされる球団になると信じている。



(上毛新聞 2009年3月4日掲載)