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県農業法人協会長  武井 尚一(富岡市宮崎)



【略歴】高崎商高卒。脱サラし、1989年から農業に従事。98年に有限会社「武井農園」を設立、農産物のブランド化などに取り組む。富岡市認定農業者協議会長。



食料自給率の向上



◎生産者、消費者が一体で



 わが国の直近の食料自給率は40%で、国民一人当たりのカロリー摂取量二五七三キロカロリーに対して供給量が一○二一キロカロリーです。政府はこれを二〇一五年までに45%まで引き上げようと、四年前に自給率向上協議会を立ち上げました。多くの団体が参画して施策を策定し、目標達成に向けて行程管理をしています。

 自給率が低下する中で、消費と生産の要因を挙げて考察してみます。まず、消費側の要因としては、(1)外国産小麦粉を主にしたパンやうどん、肉・脂の消費量が増加(2)国内で自給可能な米の摂取量が年々低下(3)食の多様化の進行―などの結果が自給率に大きな影響を与えています。国産の肉や卵・牛乳等の畜産物は、大半が外国産穀物をエサにして生産されており、自給率は家畜の消費量だけ差し引かれてしまうし、みそ・豆腐など加工品も同様です。このことが自給率低下の大きな要因の一つであり、国内で生産された米などの安全な食材を多く料理に使うことで自給率は上がります。

 これに対して多くの団体が、食育を推進し、国産の安全な農産物消費拡大運動を展開しています。行政側の群馬県でも、食品安全課を軸に食育の推進や食品の安全確保のための検査などを行っており、その活動ぶりは他県の範と評価されています。

 一方で生産側の要因を見ると、国民一人当たり百十一坪の農地面積の中で、コメは供給過剰の状態で、政府は生産調整を実施して各県に栽培面積の割り振りをしている状況です。

 群馬県では目標未達となっている現状から、県農政部は家畜飼料への生産に振り向けようと誘導、併せて経営体育成の施策を強力に遂行しています。この施策が軌道に乗れば、家畜エサの供給量増加となり、自給率が高まるわけで、生産者の理解と協力が求められるところです。

 また、農業力については、農地の遊休化・担い手の高齢化と不足などで低下との指摘があります。確かに条件不利地や家族型経営体には顕著に現れていると言えます。しかしその分、組織化、法人化をしている経営体が生産性の高い展開で供給量を増加させているので、全体としては効率化が浸透し、むしろ上昇と見るべきではないでしょうか。

 食料の自給率を高めることは世界各国の共通した課題であり、国防の観点から見ても40%では危機感を持つべきです。それを解決するための政策、特に農政改革が実施されていますが、食の多様化が進む中での自給率向上は、消費者にも担っていただき、生産者と一体となって進めないと進展しません。ちなみに群馬県の自給率は34%(二〇〇五年)。カロリーの低い野菜とコンニャクなどの栽培面積が多いためで、一九九八年と変わっていません。






(上毛新聞 2009年2月19日掲載)