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北越製紙研究所主幹  清水 義明(新潟県長岡市)



【略歴】高崎市出身。高崎高卒。東北大工学部資源工学科卒。同大学院修士課程修了。1979年から北越製紙勤務。現在、同社研究所研究員。紙パルプ技術協会会員。



環境ペレット



◎循環型社会の実現を



 実家の庭に柿の木があります。春には白い可か憐れんな花を咲かせ、秋には甘い実を結びます。中にはもちろん種があり、これを蒔まけばきっとまた芽が出てくるでしょう。でも、この柿の木にも寿命があるはずです。「生者必滅会者定離」。いずれは枯れてしまうに違いありません。

 仏教の考え方に「輪りん廻ね」があります。「すべての生き物は死んだら土に還かえり、また土から生まれる」。土に還るということは、循環型社会を実現する重要な環境キーワードです。

 燃やすことができたり、土に還すことによって環境に優しいといわれる製品は、さまざまな分野で見られます。一見プラスチックのような皿やスプーンでも、実は植物と樹脂を混ぜたものがあります。これは環境ペレットと呼ばれているものです。

 環境ペレットに使われるバイオマス(=植物)は、間伐材、木粉、紙(古紙)、古古米、もみ殻などの、今まであまり使われていなかった、いわば未利用資源なので、廃棄物の削減に貢献することにもなります。

 ここで使われる技術は、必ずしも革新的な技術と言えませんが、作られる製品が既存の石油プラ製品の置き換えになり、環境問題に対する有効な技術といえるでしょう。

 以前かかわった製法の一例ですが、バイオマスとして紙(古紙)を使う場合、樹脂とうまくなじませるための工夫が必要です。そのためにまず紙を細かくすること。その後、この紙を樹脂となじませるために、特殊な薬品処理を行います。こうしてできたペレットは、前述の皿やスプーンを作る時に、流動性の良い材料となり、紙であっても樹脂と同じような性質になるわけです。

 さらに、この樹脂を植物からつくるバイオプラスチックというものがあります。トウモロコシなどの澱でん粉ぷんを原料とするポリ乳酸樹脂といわれるものが代表例です。従来の石油から造られるプラスチックに比べて、バイオマスを原料としているので、バクテリアによって分解され土に還るという優れた性質(生分解性)を持ったプラスチックです。

 穀物などを材料とすることの是非はありますが、現在のところ環境ペレットに使われている石油系樹脂の代わりに、この樹脂を紙に混ぜれば、ほとんどすべてが植物でできた素材になります。

 今後穀物を使わず、食糧と競合しない材料から樹脂を開発することができれば、これこそ自然と調和し、地球環境に優しい、循環型社会の実現につながるのではないでしょうか。





(上毛新聞 2009年2月15日掲載)