視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎地球環境マップ作成を 群馬県の絶滅の恐れのある野生生物(通称レッドデータ)の動物編には、メダガ、ゲンゴロウ、スズムシ、ケラ、サワガニ等、私たちが子供のころに慣れ親しんだ生物が記載されています。また、同植物編にはオミナエシ、フジバカマ、キキョウ等、秋の七草もみられます。 これら身近な動植物がレッドデータに指定された理由は、生活環境の変化や生育地の減少、乱獲等さまざまですが、私たちの経済活動の影響を受けていることは否めません。私たちは知らず知らずのうちに、自然環境を質・量ともに変化させ、身近な動植物をも絶滅の危機へと追い込んでいたのです。そして、この傾向は現在も続いています。 かつて、県で公告縦覧されている環境影響評価書を拝見させていただいたところ、集落付近の計画地で身近な植物が貴重種として確認されていました。そのうち、開発予定地に生育していた貴重種は計画の変更や移植により保護されたのですが、移植されたものはその後個体数が減少しました。移植に関しては専門家の意見に従っており、手順や手法などに問題はありませんでしたので、保護の最善策を執ったとしても、その結果は意に反することもあると言えます。 また、開発の際に環境アセスメントが実施されるのは、環境影響評価法や県環境影響評価条例の対象となる大規模開発に該当する場合です。環境影響評価にかかわる手続きで、県で公開されているのは、平成十一年から現在まで、合計十二事業ですので、アセスに該当する事業は少ないと言えます。 このようにアセスを事例としても、そこには自ずと限界がありますので、私たちが身近な自然を守り、かつ絶滅の危機にある生物を保護・保全しようとした場合、さらなる取り組みが求められていると言えます。 筆者はその第一歩として、地域環境マップの作成を提案します。これは地域住民の参加が重要なポイントで、必要に応じ専門家に依頼しながら、現在の環境を正しく把握し、貴重な自然の分布等を確認するものです。身近な自然を見直すことは環境保全の意識の向上や郷土愛の深まりにつながりますし、その機運の上昇は地域に不必要な開発を入れさせない抑止効果も生じます。また開発計画が生じた際もこのマップがあれば計画の是非について適切な助言ができますし、定期的にその内容を見直すことにより、経年的な環境の変化を知ることもできます。 先祖から受け継いできた自然を子孫に残すために、また、子供たちから花を摘んだり、虫を取ったりして遊ぶ楽しみを奪わないために、私たちは私たちが子供のころに存在したような身近な自然を取り戻す努力をしていかなければならないと思います。 (上毛新聞 2009年2月8日掲載) |