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◎自分の好み探すために ワインが一部の人たちだけの飲み物でなく、多くの人たちにとって、ただのお酒であればと強く思います。 少ないスタッフで営業していると製造をしながら直売所で接客も行い、時には百貨店などで試飲販売もします。直接消費者の声を聞く大変良い機会ですが、残念に思う時があります。直売所を含め店頭での試飲は、好みに合うものかどうか飲んで試せる楽しい場です。しかし、せっかくのその機会が、プロが行うような「テイスティング」の場だと敬遠されることもしばしばあります。「ワインはよくわからないから」「コメントできないから」とせっかくの機会を失ってしまう方が多くいらっしゃるのです。ある種の利き酒の方法や言葉ばかりが取り上げられ、ワインを楽しむには、超えなければならない高いハードルがあるように感じている人が多くいるように思います。これではいつまでたってもワイン文化は根付きません。 「テイスティング」には三つのパターンがあることをご存じでしょうか。第一に生産者が製品に事故がなかったかどうかを見極めるためのもの。醸造、貯蔵中の酸化や、微生物による汚染などを判断するテイスティングです。二番目はソムリエなどが行う、料理との相性や、特徴のあるなし、飲みごろはいつなのかを判断するテイスティング。花の名前や果物などで表現するのは、仲間同士が実際にワインを飲むことがなくても言葉で共通の味わいをイメージするためなのです。わかれば楽しみも増えるでしょうが、普段ワインを飲むためには、あまり必要ではありません。三番目は自分の好みを探すためのテイスティングです。 ワインを飲む文化を定着させるには、三つめの要素が最も大切なのではないでしょうか。そのためには生産者としてしなければいけないことがいくつかあります。好みを探しやすいように統一した基準を公表することや、各社のスタイルが一目でわかるような「見える化」の作業、自分の好みの伝え方や美味(おい)しいと感じるワインの探し方などを紹介、普及する場も必要でしょう。それから、劣化したお酒を市場に流通させないことも大切です。これには一社、一店舗といった単位ではなく、業界として取り組む必要があります。 ワインは気軽に楽しむことが大切です。私は今後も「ワインは楽しい」をもっとわかりやすく伝えられるよう心がけていきたいと思います。二〇〇七年度の成人一人当たりの果実酒消費量は山梨県六・八リットル、群馬県一・六リットルだそうです。ワインを身近に感じることができれば、ワインのある生活がより違ったものになることでしょう。皆さんも気軽に思ったことを伝えてください。 (上毛新聞 2009年1月18日掲載) |