視点 オピニオン21
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NPO法人手をさしのべて理事長  桜井 信治(高崎市寺尾町)



【略歴】】県内22団体で組織する不登校ひきこもり支援団体ネットワーク代表。学習塾グローイング代表。高崎市まちづくり市民会議、県教育問題県民懇談会の各委員歴任。


不登校ひきこもり支援


◎根気と強い気持ち必要



 NPOになって二年が過ぎました。この活動を始めて何年になるでしょうか? 本当に自分でもわかりません。約千件くらいの相談にはかかわってきたと思います。でも、今考えても本当に大変な作業です。正直、今でも常に勉強中と言わなければならないことがたくさんあります。

 先日も不登校ひきこもりとはまったく関係のない相談がありました。もちろん心理カウンセラーを名乗っていますから断ることはしません。相談を聞いていると子育ての話にもなりました。やはり根底はそこに行き着くんですね。

 ひきこもりは家庭や生活環境に問題がある、とたいてい指摘されます。しかし、私はそこの問題は少ないと思っています。なぜなら群馬県の人口の1%くらいはひきこもり(大人も含む)の状況にあると推計されています。二百万人の1%は二万人ですよ。だとすれば、身近にいないほうが不思議ですよね。

 でも、不登校ひきこもりの子を持つ親で特殊な子育てをしている方が身近にそんなにいますか? と考えると誰でもなる危険があることだと思えてきませんか? この問題はどんな家庭にもいつ襲ってくるかわからないことなのです。問題はそこをどう対処するかですよね。

 この活動を行っていて本当に毎日が戦いです。まったく同じケースなどありえませんからね。だからこそ、その時間が大切であり、責任の重い仕事なのかもしれません。私はその時間を本当に大切にしています。常に一対一の真剣勝負です。結果もしっかりと表れます。大変な作業の繰り返しですが、そんなに気構えたりせず活動しています。重たい気持ちで取り組んでいては子どもに悟られますからね。

 そこまで感じるまでの時間は本当に長かったように思います。でも今ではそんな時間が何よりの宝であり、私の足跡でもあります。そんな積み重ねが私の実績になってきています。私は誇りを持ってこの仕事をしています。

 玄関も開かない家に三年も通ったこともありました。目の前にいる子どもに携帯からのメールだけで会話をしたこともありました。雪の中、一時間も外で待ったことも。

 こんなことが子どもの気持ちを動かしたのかもしれませんね。私はカウンセリングを行っています。でも、一番はこの根気で何とかしているのかもしれません。人の気持ちを変えるにはもっと強い気持ちが必要なのかもしれません。私はそんな人間になりたいと常に思って活動を続けています。




(上毛新聞 2009年1月16日掲載)