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◎外国にもっと関心を 上野国(こうずけのくに)の一之宮といえば、富岡市に鎮座する一之宮貫前神社です。本殿が長い下り階段の行き着いたところにあるという全国でもなかなか例を見ない構造の神社です。創建は安閑天皇の元年(五三一年)と極めて古く、祭神は経津主神(ふつぬしのかみ)と比売大神(ひめおおかみ)という男女の神様です。男神は安中に住んでいた物部姓磯部氏の氏神。女神はこの地に住んでいた帰化人の神で養蚕機織りの神といわれて、彼らが養蚕機織りの技術を持っていたのです。比売大神の神の性格は、神社で今でも服部少女(はとりめ)が機を織る御み機織り神事が行われることからも伺い知れます。この神は、一説には、インドの美女で安閑天皇の御世(みよ)に日本にやってきたといわれています。 以上の話は、古代の群馬人(ひと)が、外国の神様に守られ、外国から来た人から養蚕や機織りの技術を教えてもらい生活していたことを物語り、この時代、既に群馬が国際性に富む地域であったことを示しています。 では、現在はどうかといえば、古代以上に外国との関係は深まっています。現在、中国・韓国から導入された技術で生産された生糸に取って代わったのが合成繊維ですが、その原料は石油でほとんどを中東諸国からの輸入に頼っています。合成繊維からは建築資材、電気・電子機器、自動車部品などわれわれの生活になくてはならないものが数多く作られます。 外国人移住者といえば、中国や韓国からだけでなく、今ではブラジル、フィリピンなどからの約一万人もの外国人労働者がわれわれの生活を助けてくれています。特に大泉町は人口の16%、太田市では4%もの外国人労働者が働いています。また海外との人の行き来も盛んで、群馬県では世界三十七都市と交流があります。他方、海外へは群馬から自動車製品、電気機器などの技術が出ています。世界は今や、持ちつ持たれつの関係にあるのです。 今までわれわれは、どちらかといえば世界で起こっていることに無頓着でした。ましてや外国の人がどんな思いで毎日を過ごしているのかなどといったことに関心を寄せることはほとんどありませんでした。しかし、その時代は過ぎました。今は、昨今の米国の金融危機を対岸の火事として傍観していられないように、外国で起こったことは瞬時にわれわれの生活に影響を与えます。 その意味でわれわれは、世界の安定・繁栄がわれわれの生活の安定・繁栄に直接関係がある時代にいることに気づき、世界の人々の生活・行動にもっと関心を寄せ、さらにはその生活・行動の基盤たる宗教などを理解する必要があります。そして世界の人々が安心して、豊かに生活できるよう、わずかでも手助けすることを心がけるべき時期にいるのではないでしょうか。 (上毛新聞 2009年1月3日掲載) |