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◎県民が「群馬」を語ろう 「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産運動をはじめた二〇〇四年当時は世界遺産運動に大変風当たりが強く、「富岡製糸場を世界遺産にしましょう」とお話ししても、「世界遺産になんかなるはずがない、無責任なことを言うな」「子供の時から毎日見ていて、普通に存在しているものが、世界遺産になんかなるものか」という反応がたくさんありました。〇七年一月に世界遺産暫定リストに登載されてからは、世界遺産運動への反応が大きく変わり、「いつごろ、世界遺産になりますか」「頑張ってください」といった声が大きくなり、活動の回数もますます増えて、充実した活動の展開になっています。 世界遺産運動をはじめた時に考えていたことは、群馬県の人たちが、他県の人に群馬について聞かれても、「群馬には国宝もないし、たいしたものはないよ」といったような答えをする人が多いということでした。そのため、群馬には国を動かし、世界に羽ばたいた貴重な文化遺産があることを認識して、自分たちの住む郷土・群馬県に自信と誇りを持って、胸を張って生活をしていただき、子供たちにも、自信を持って成長してもらえるように、国宝よりも、世界に通用する世界遺産を実現したい、との大きな思いを持っていました。 絹産業遺産群は、今、群馬で生きている人たちも含めて、県民の総力で育ててきた産業遺産です。それが世界・人類の宝として認められようとしているのです。群馬県民は自分の住むところが、素晴らしい地域なのだということと、群馬県人の知恵と活力に自信を持って生きてほしいし、子育てをしていってほしいと思います。自分の住んでいるところを、「たいしたところではない」などと思わないでいただきたい。群馬県がどこにあるのか分からない国民がたくさんいます。場所の認知度は全国の下から何番目、というところにあります。これを、行政の責任などにしないで、群馬を自分たちで語っていきましょう。絹産業遺産群だけでなく、尾瀬も、谷川岳も、赤城、榛名、妙義の上毛三山も、こんなに美しい自然はありません。他県には見られない素晴らしい風景です。全国に誇れるものです。 先日、長野県の野沢温泉に宿泊しました。旅館のタオルは「北信州野沢温泉」と、しっかり長野県を主張しています。群馬の温泉旅館で、このように「群馬県○○温泉」と群馬県を主張しているところはどれくらいあるでしょうか。すべてのところで、自信を持って、群馬県で生きていることを主張し、この美しさが、おいしさが、この快適さが「群馬県」だと県民一人一人が語っていきたいものです。 (上毛新聞 2008年12月25日掲載) |