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◎いつも1Rと2Mを 「交通安全」はいつごろから叫ばれるようになったか知りませんが、日本に自動車が登場してからのことでしょう。しかし、これほど日本人に定着し、だれでも知っていながら、なかなか実行されていない言葉はありません。交通安全を多くの市民に訴えても、異論を唱える人はまずいません。しかし、交通安全を常に心掛けている人がどれだけいるか。もし、調査したとしたら、いささか心もとない結果になるでしょう。 輸入車だけの時代から国産車の登場、軽自動車の普及、そして自転車、二輪車の増加に、道路や橋などの社会基盤整備が追いつかず、交通事故の発生が増加しました。日本が急激な経済成長を遂げてバイクや自動車が増え、それらが身勝手に走れば衝突するのはむしろ当然でしょう。 そこで、国がルールを決めて国民に交通安全を呼びかけたのです。今の道路交通法が施行されたのが一九六〇年。何度も改正していますが、基本はこの時からです。道路整備が進み、自動車の性能もアップしてくると、速度超過による事故が目立つようになりました。死亡事故の急増です。 高度成長という美名に隠れて、死者は増え続けました。県内の死者は七三年に三百五十一人を数え、文字通り「交通戦争」という最悪の状態になってしまいました。県内のどこかで、毎日のように尊い命が消えてしまったのです。 交通死亡事故が悲惨なのは、健康に問題なく日常生活を送り、社会に貢献していた人が突然、本当に突然消えてしまうからです。 春と秋の二回、全国交通安全運動が行われます。目的はただ一つ。「交通事故をなくすこと」。そのための行事が各地で展開されているわけですが、こんな陰口を時々耳にします。「パレードをすれば事故は減るのか」「チラシを渡されたってごみになるだけ」「交通安全なんて言われなくても分かっている」 その通りだと思います。でも、現実に交通事故は今も起きています。県内の死者は昨年百人でした。ピーク時と比べると大幅な減少ですが、私は「百人も亡くなった」という気持ちです。国や県、市町村が道路の形状や環境を改善し、協力団体が奉仕活動を展開してもなお「百人」です。 交通事故はあらゆる防止対策の相乗効果がなければ減りません。ルール(法律)を守ることはもちろんですが、モラル(道徳)とマナー(行儀)を身に付けることも不可欠です。「法律さえ守っていればいい」という考えは間違いです。『法律は道徳としての最低限の規範』なのですから。要は運転者、歩行者を問わず、道路を利用するすべての人がルール、モラル、マナーの1Rと2Mを常に意識することです。 (上毛新聞 2008年12月21日掲載) |