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NPO国際エコヘルス研究会理事長 鈴木 庄亮(渋川市北橘町)



【略歴】群馬大医学部卒、東京大大学院修了。東京大医学部助教授、群馬大医学部教授(公衆衛生学、生態学)、群馬産業保健推進センター所長など歴任。群馬大名誉教授。




人と人の関係



◎一緒に暮らすのが良い



 アンケートでストレスの原因をあげてもらうと、いつも上位にくるのが人間関係である。人と人の関係はストレスの大きな原因の一つではあるが、逆にストレスを解消して、心を温めてもくれる。

 人と人の関係の原点は家族関係にあり、家族の成員の間の支え合いは最も重要である。しかし、現代は個人や家族を小さく分断する力が容赦なく作用する。その結果、独身・単身者、核家族、児(こ)のいない家族、単身赴任者、独居老人などが多い社会になって久しい。

 私どもは県内一市一村の中年男女住民約一万人を対象に、その<暮らし方↓心身の健康↓死亡リスク>という因果関係についてこの十五年間、疫学継続調査をしている。その中で病気や死亡のデータを集め、どういう暮らしの人がそうなったかを統計解析し、リスクを求める。例えば―。

 世帯人員数が四人以上の中年者のうつ病リスクを1・0とすると、一人暮らしの村人は2・01、市街地の人は1・96と二倍ほど高かった。配偶者のある人はうつ病リスクが最小でこれを1・0とすると、未婚の男は2・48と有意に高く、女は2・01であった。離婚した男は3・34と最も高く、女は1・26とあまり高くなかった。一般に配偶者は結局助け合ってお互いに元気をもらっている。暮らしの中で、女性からの配慮の力が男性により強く働いていることもわかった。

 親しい人と会う回数とうつ病との関係は、よく会うことがある人はうつ病リスクが最低で、これを1・0とすると、ほとんど会うことがない人のそれは1・99と高かった。

 世帯構成人員が一人増すごとに、中年者の死亡リスクは0・9ずつ減少することもわかった。これは、一人で暮らすよりも二人、二人よりも三人、三人よりも四人で暮らすほうが死亡リスクが小さい、すなわち長生きする、という結果であった。単身生活者よりも、配偶者と暮らす世帯、二・三世代世帯の方が死亡リスクは小さかった。これらはなぜなのだろうか。

 これらのことの理由はおそらく、多様な親族が一緒に暮らすことで、心が活性化され、物・食事・生活時間などがより適正に保たれ、生活に有利な情報が飛び交うためと思われる。このように、多様な家族構成と親しい友人などで、心が元気になるとうつが晴れ愁訴も少なくなり、日常の活動・運動も活発になる。

 自分の心身は健康だと確信できている人、すなわち自分は心身とも健康だと感じている人は死亡リスクがとても小さく、いきいき長生きできることも国際的に定説となっている。元気や生きがいを人から頂き、またお返しする、そうしやすい暮らし方の工夫・努力をし、社会の仕組みをつくっていく必要がある。






(上毛新聞 2008年12月8日掲載)