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◎団塊の世代に期待 新専攻生を迎え入れるに当たって、ここ数年の傾向がある。 男子が少なく、女子が圧倒的に多いのだ。このままでは発掘ができなくなると危惧(きぐ)している。 もっとも、昔のように屈強な男子がシャベルで土を遠くへ美しく飛ばす「エンピ投げ」を競っていた時代は終わりを告げた。今は黙々と忍耐強く作業を遂行することが求められている。 なぜ、考古学を選択したかを聞くと、テレビ番組に登場するミステリーハンターに憬(あこが)れて、というのが結構多い。 捏造(ねつぞう)事件の一件以来、舞台となった宮城県下の大学では考古学専攻生が急減したという。 それに加えて、最近では小泉改革の一連の施策、行政改革、民活の導入、市町村合併などのあおりで、考古学界は冬の時代を迎えた。博物館の指定管理者制度の導入に先んじて、「行政発掘」が「民間発掘」へと動き出したのだ。 高度経済成長期には開発事業の露払いとして、遺跡発掘が行政主導のもとに実施され、全国各地の都道府県市町村で埋蔵文化財専門職員の採用が空前絶後の盛況ぶりだった。中には一時的な埋蔵文化財の調査に対応するため、調査会方式を採用するところもあった。 また、行政が外郭団体の埋蔵文化財調査事業団を組織し、正規職員や社会科教員を出向させたり、不足分を嘱託職員の採用によって埋め合わせしようとしたりした。 しかし、公共事業の減少や景気低迷による開発行為の下降によって、大きな変化が起こった。一部地方公共団体は出向職員を本庁へ、出向教員を教育現場へと人員引き揚げを行い、嘱託職員の再雇用をしないという措置に出たのだ。その結果、埋蔵文化財調査事業団・センターの解体されるところが出てきた。 最近は、民間発掘会社が事業を請け負い、行政がそれを指導・監督するという構図の構造変化が見られるようになってきた。民間発掘会社の中には開発土木会社や測量会社が埋蔵文化財発掘部門を新規に立ち上げるというケースが多い。 そのため、顧問に埋蔵文化財行政のOBや大学教員経験者などを採用して、技術指導を仰ぐ一方、行政や大学とのパイプを生かして事業の呼び込みや人材確保に躍起になっている。 高度経済成長期に埋蔵文化財担当職員として採用された団塊の世代が大勢、定年を迎える時期が来た。それらの“実戦”経験者が豊富な経験を生かして第二の人生の中で、埋蔵文化財とどのように向き合っていくのか注目したい。 (上毛新聞 2008年11月9日掲載) |