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県立ぐんま天文台観測普及研究員 浜根 寿彦(高山村中山)



【略歴】東京都杉並区出身。1997年から県職員。県立ぐんま天文台の発足準備に携わり、99年の開館時から現職。彗すい星せいの観測的研究など惑星科学が専門。



県有施設の活用


◎資産を生かす施策を


 子どもたちのためという施設に子どもだけで行く手段がないとしたら、どう思いますか。観光のためという施設に旅行者が手軽に利用できる交通手段がないとしたら、どう思いますか。

 子どものころ、友だちと鉄道やバスを利用していろいろな施設に出かけ、得難い体験を満喫してきた私から見れば、ぐんま天文台やぐんま昆虫の森などの県有施設への交通は、子どもや旅行者にたいへん不便できわめて不親切です。自家用車の利用は決して当たり前のことではありません。本県は自家用交通手段の有無で利用者を選別していると言われても、致し方ないでしょう。

 土・日曜日や祝日だけでも直行バスがあれば、適切な交通費で、子どもも旅行者も施設に立ち寄ることができます。このような交通機関を、子どもや旅行者のことを思って要望する利用者の声が、日ごろから施設に寄せられています。しかし、交通手段の確保は一施設でできる経営努力の範囲を超えています。どうしても行政の施策が必要です。

 ぐんま天文台などの県有施設には教育目的のものが多くあります。当然、学校の利用も期待されます。しかし、プログラムを用意してもなかなか使ってもらえません。校外活動を行うには学校にさまざまな制度上・財政上の制約があり、学校単独では解決できないからです。学校にどんなにやる気があってもです。ここでも、行政の施策による制約の回避がどうしても必要です。

 いかに魅力的な施設運営をしても、広報を工夫しても、交通の便や制度上の使い勝手が悪ければ利用者が限られます。利用者増を、と現場に言うのは簡単ですが、かけ声だけでは済まされません。必要な施策を行政の責任で実行することが、県民の資産である県有施設を生かすために絶対に必要です。

 県財政がきわめて厳しい現在、県有施設を地域や近隣の施設と有機的に結びつけ、その機能を十二分に生かすことが最大の資産活用になります。それには個々の施設の運営努力はもちろんのこと、知恵という無限の財産を駆使した行政による施策の実施が求められます。個々の施設の予算を減らして経営努力を求めれば済むという問題ではありません。県民の資産を総合的に生かして活用する責務のある県行政のあり方が真に問われる課題です。

 県有施設には教育・文化施設が多々あります。県民のために十二分に施設を生かす施策の策定には、滋賀県立琵琶湖博物館のように、経済的効果だけでなく文化的・社会的効果を含めた評価の視点と方法を探り、結果を運営に反映させる姿勢が求められます。これもまた県行政の本気度が問われる課題でしょう。




(上毛新聞 2008年10月23日掲載)