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◎仕事力と英語力を 先月末、神流湖沿いに車を走らせ、下久保ダムを横目に見て神流町まで一時間半、中学生の英語スピーチを聞いてきた。山を越え谷を越えた日本列島の奥深いところで、こんなに素晴らしい英語を話す日本の中学生に出会うとは、予想もしていなかった。 多野郡の大会参加者は二十四人。各校各学年から一―二人ずつが選ばれて、晴れの舞台にあがった。そこで二人に絞られ、今月、前橋市で開かれた県大会では、県全域から集まった総勢四十六人からさらに三人が選出された。彼らは十一月に東京で開かれる決勝大会で、約百五十人の各県代表と最後の喉(のど)(?)を競うことになっている。まるで英語スピーチ甲子園だ。 英語弁論大会に出たい人を募ると、最近ではこの子もあの子も手を挙げるという。「英語の先生やALTの特別トレーニングを受けたい」というのがその理由。二年間続けて参加した生徒も珍しくなく、「自分の考えを英語でまとめて多くの人に聞いてもらった喜びは一生忘れられない」という声も直接聞いた。彼らの体から、抑え難い英語熱が発散していた。 秋は進学コースを決める時期。そこで書いておきたいことがある。「英語が好きだから大学で英語を学びたいのですが…」という相談が多いからだ。英語学、英文学、英語教育の専門家になるなら話は別だが、コンピューターと同じく、英語はどんな分野に進んでも必要な道具。道具だけ磨いてどうするつもりなのか。まずはどんな分野に進むかを真剣に考えてほしい。 国際業務に携わる日本人七千三百五十四人を対象とした『企業が求める英語力調査報告書』がある。彼らがコミュニケーション上で最も苦労しているのは、「相手の言うことに反論して自分の論を進めることができない」こと。二番目は「話す内容の広さと深さが乏しい」ことだという。反論して相手を説得するには、論理的な思考や知識が物を言う。それは会話本や映画のセリフをカット・アンド・ペーストしても出てこない。自分の考えを論理的につきつめ、仕事にまつわる周辺知識をたくさん集めて初めて生まれてくる力だ。まずは専門を極めること。その上で、それらを説明する言葉を磨くことが重要だ。 先の調査に協力した82・9%の人たちは、これからの英語教育に、「議論とスピーチの向上を目指し相手を説得できる教育体制を整える」ことを求めていた。英語スピーチを指導した先生方はまさにこの要望に応え、スピーチに燃える中学生たちは、すでに良いスタートを切ったことになる。彼らが専門力とコミュニケーション力を併せ持った人間に成長することを切に祈っている。 (上毛新聞 2008年10月19日掲載) |