視点 オピニオン21 |
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◎理解して交流しよう 職場で同僚に「ちょっと手を貸して」と言われて、ぬっと手を差し出す…。 コピー機の設定がわからなくなり困っていたら、通りすがりに上司が「頭を使えよ」と一言。後には、一生懸命「頭」でコピー機のボタンを押す男がひとり…。 「あなたって冷たい人ね」と母が父に言う。びっくりして父をさわって一言「冷たくありません!」…。 「あー疲れた、足が棒になりそう」。えっ?とびっくりして母のスカートをめくりあげ、足が棒になっていないことを確認…。 「お友達をぶっちゃだめだよ」。「うん!」と去り際に、けっ飛ばす。彼に言わせれば「俺(おれ)、ぶってないよ」ってことでしょうけれど…。 「お風呂みてきて~」「みてきたよ~」。数分後、お風呂場からはザーザーとお湯のあふれる音が―。「みていただけじゃだめでしょ!」(え? みてきてって言ったじゃん)…。 調理中にお客さん。「ちょっとお鍋みてて!」「は~い」。なんだか焦げ臭くない? 台所ではコンロの前でお鍋をじっと見つめる人が…。 どれも本当の話。全部、自閉症の人たちのエピソードです。なぜこのようなことが、まじめに本当に起きてしまうのでしょう。自閉症の人たちの頭の中はどうなっているのでしょう。第三者として話だけを聞けば、思わず笑ってしまうようなことばかりです。 でも、一緒に暮らしている家族や、日ごろかかわっている人たちに言わせれば、「一事が万事この調子…」と、あっけにとられたり、イライラしたり…。「そっかぁ、大変ですねぇ」と周囲から同情されるのは、家族や、かかわっている人たちのほう。 でも、大変なのは自閉症の人たちも同じなんです。 「世の中の人たちは何で僕(私)たちがびっくりするような比喩(ひゆ)表現(頭を使う、足が棒、冷たい人など)をするんだろう?」「言われた通りにしたのに何で怒られるんだ?」「一生懸命がんばっているのに、ちっともわかってくれない」。そんな声が聞こえてきそうです。 気持ちのすれ違いは、わだかまりや恨みやあきらめにつながっていきます。「わからないから」「自分とは違うから」と思っていたら、その溝は深く広くなっていくだけです。 せっかく同じ世界に生まれ暮らしている人間同士です。「ねぇ、あなたたちの頭の中ってどうなってるの?」と、お互いに見せっこ(本当に頭を開いてはいけませんよ!)してみたら、案外、お互いに「なるほどぉ。そうだったのかぁ」って簡単に、結構楽しく、暮らしていけるようになるかもしれませんよ。 (上毛新聞 2008年10月4日掲載) |