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◎ポーズでなく有効に 子供の夏休みの自由研究で牛乳パックや新聞紙などから紙を再生する紙漉(す)きをやってみた。これが結構面白くて、息子以上に私が夢中になってしまった。 牛乳パックはコーティングがあるので一見大変そうだが、剥(は)がせば汚れていない良質なパルプが出てくる。それに和紙材料を混ぜたら、素晴らしい紙ができた。そうなると牛乳パックが宝の山のように見えてくる。妻が野菜ジュースをペットボトル入りで買ってきたりすると、なんで紙パックで買ってこなかったのか、と文句を言ったりする。でもだからといって送料を払って遠くの知人から牛乳パックを送ってもらおうとは思わない。その送料を払うくらいなら、近くの店で購入できる和紙材料を購入したいからだ。その方が良質だし、コーティングを剥ぐ必要もない。 リサイクルとは本来このようなものだということが分かる。 つまり、そこにあって、その場で再生が始まるのなら非常に価値があるが、それにお金を払って移動させるとなると、とたんに経済性が悪くなる。 私の住む名古屋市ではアルミ缶の回収日になると朝早くからホームレスの人たちが、自転車に乗りビニール袋を持って大量のアルミ缶を集めている。本来は市の所有物としての資源だろうが、価値あるものは放っておかれない。同じように古紙回収の日の段ボールは回収の車が来る前に、古紙業者が持っていくことが多い。 ところが同じように分別されているペットボトルを持って行く人はいない。プラ包装も紙包装も同様だ。そう考えると現在のこれらのリサイクルが本当に有効なのかどうか疑問に思えてくる。 リサイクルの移動で最も高価なものは、行政が人を雇用して行っている回収なのかもしれない。ホームレスの自転車と三人がかりの回収車を見比べれば一目瞭然(りょうぜん)だ。高価な回収コストがかかれば、当然再利用のコストは高くなってしまいリサイクルの有用性が損なわれる。 価値あるものならば、集めて出しさえすれば、行政が回収しなくても低費用で持っていきたい人がいる。ないしは自分で持っていく。その力をもっと有効に利用してもいいのではないか。 誰も持っていかないものは行政がごみとして回収し、可能な限り移動を少なくして再生する。場合によっては分別せず一緒に回収した方が移動にかかる石油消費は少なくなる。それでも磁石などを用いて有用な金属の分離は可能だろう。 そろそろリサイクルのシステムが見直されていい時期ではないか。必要なのはポーズとしてのリサイクルではなく、環境に優しい有効なリサイクルだからだ。 (上毛新聞 2008年10月2日掲載) |