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◎卑怯を憎む心育てよう 食品偽装、賞味期限改ざん。この言葉からいくつの事例を思い浮かべることができるでしょうか。 雪印食品、石屋製菓、赤福、マクドナルド、崎陽軒、ローソン、不二家の賞味・消費期限改ざんなど。船場吉兆の食べ残し使い回し・牛肉偽装、ミートホープの偽装肉、丸明の飛騨牛偽装、廃鶏の比内地鶏偽装。外国産ウナギ・トラフグを国産といつわる偽装。そして事故(汚染)米の食用米としての偽装転売。両手で足りないくらいです。 とくに、健康被害を引き起こす可能性のある汚染米事件は重大です。いったい何故(なぜ)このようなことが続くのでしょうか。 多発する無差別殺傷事件や親殺し・子殺し、万引の増加、モンスターペアレントの出現、学級崩壊、ごみのポイ捨て・不法投棄。実はこれらのことも食品偽装事件と共通のものがあると思われます。 ベストセラーになった藤原正彦氏の『国家の品格』にその答えをみることができます。 著者は最近の日本人が失ったものを嘆いています。武士道における卑怯(ひきょう)を憎む心、茶道や華道にみられる自然に対する日本人の繊細な心・情緒、他人を思いやる心などです。とくに、他人を思いやる心と卑怯を憎む心は大切で、道徳の基本です。 著者は、弱いものいじめはいけない、男は女を殴ってはいけないと父親から教えられたそうですが、その理由は「卑怯だから」です。 万引がいけないのは法律違反だからではなく、「卑怯だから」と思わなくては誰も見ていないところでの万引はなくならないと訴えています。 また、資本主義をアメリカ化するグローバリズム、市場原理主義による金銭至上主義が跋扈(ばっこ)することにより格差社会が出現し、弱者へのいたわりをなくしているとも述べています。 これらのことが、自分さえよければいいという人間を生み出しているように思えます。 それでは、どうしたらいいのでしょうか。 「卑怯を憎む心」を含めた教育が重要です。こどもの人権を尊重する必要はありますが、あまやかしてはいけません。小学校低学年から、いや幼稚園から、悪いものは悪いと教えることが重要です。学校教師に“愛の教鞭(きょうべん)”を持たせることも考慮すべきでしょう。 また、悪さをした子供たちを叱(しか)る近所の頑固親父(おやじ)の存在も必要です。 教育は学校だけでなく、家庭と社会が一体となって行うことが重要と考えます。 (上毛新聞 2008年10月1日掲載) |