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◎質の高い看護に繋がる 最近、ワークライフバランスという言葉をよく耳にするようになった。ワークライフバランスとは、仕事と生活に適切なバランスをとって、豊かな生活を送ろうという考え方。米国では古くからあり、特に一九九〇年代後半に企業で盛んに取り入られるようになった。 現在、世界中の国々が、深刻な看護師不足を特徴とする看護マンパワー危機に見舞われており、その主な要因は不健全な労働環境であるといわれている。そのような状況下において、国際看護師協会(ICN)は昨年三月、「すばらしい看護実践環境‥質の高い職場環境は質の高い看護ケアにつながる」という「ワークライフバランスの考え方」を報告書として発表した。看護師が質の高い看護を提供するためには働きやすい職場環境が必要であり、病院経営者や管理的立場の者は積極的に支援をしていくことが求められるようになった。 日本も看護師の人材確保が厳しい状況であり、病院運営においてワークライフバランスの考え方を取り入れることが求められた。そこで当院も質の高い看護ケアを提供するために、職場環境を整備することに努めてきた。 当院の看護師は結婚や出産・育児、またキャリアアップといったライフステージの岐路に立つ年代が多い状況にある。特に子育て支援については積極的に環境を整備することが求められた。出産後、職場復帰しやすいように、子供の成長や復帰に向けての不安や悩みなどについて面談で対応し、なるべく希望部署へ配置するように配慮。また、職場復帰後、安心して子供を預けられるように院内保育園を設置した。零歳児から三歳児を対象としているが、夏休みや冬休みの期間には積極的に学童も受け入れている。また、ベテラン保育士が育児に対しての面談をするなどの体制も整えた。 さらに、子供が就学する前までを夜勤免除期間として、賞与や退職金にも影響しない制度を設け、就学後は、子供に影響のないようにと、夜勤回数や就業時間帯に配慮するようにした。その結果、数年前から職場復帰率ほぼ100%を維持するようになった。 最近では仕事と育児のバランスだけではなく、さらにスキルアップを求める看護師も増えている。子育て支援とワークライフバランスは、仕事と子育ての両立支援だけではなく、キャリア開発の支援ともなる。活用することで、専門性を身に付けた看護師の養成と、質の高い看護ケアに繋(つな)がると確信している。今後も管理的な立場として、質の高い職場環境の提供に努めていきたいと思っている。 (上毛新聞 2008年9月11日掲載) |