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◎湿原の成因を知ろう 尾瀬が国立公園として誕生し一周年。種々行事が実施され、各地より尾瀬を訪れる人々も美しい緑の山、澄んだ空気、清らかな水の流れに満足して帰路につかれる。県内の各校諸君も多数、尾瀬学習に参加され、自然学習に効果を挙げているようである。そこで尾瀬探訪の事前学習の一助として何点か挙げてみたい。図書も多数発行されているので、これらを参考にして知識を広げておくと、さらにその楽しみが倍加すると思う。 まず尾瀬湿原の成因を知ることであろう。尾瀬は那須火山帯の南端に位置し、尾瀬を取りまく山々はいずれも二千メートル級の火山である。往古、この山々は噴火を繰り返し、尾瀬の谷に広大な堰(せき)止め湖を出現させた。この山々の中で噴火のなかった山は西方にある至仏山だけである。火山群の中で最後に噴火したのが、二重式コニーデ(成層火山)の燧ケ岳で、この溶岩流で分断され残った沼が尾瀬沼である。 尾瀬ケ原は周囲の山からの火山礫(れき)、火山灰などとともに草木の泥土が流れ積もり、岸辺から沼へとのび湿原が造成されてきた。これらの草木の根元には水蘚(すいせん)類が成長し、現在の尾瀬の景観となった。この姿の出現までには永い年月が経過したのであった。 次に、尾瀬を観察するには、その表ばかりでなく細部を見てほしい。ミズバショウ、ニッコウキスゲ、ワタスゲ等はよく知られているが、その根元にはナガハモウセンゴケ、マルハモウセンゴケ、ムシトリスミレなど食虫植物がその成育の場を選んでいるし、他の植物もそれぞれの場を選択して成長している。原の諸所に見られる沼には、オゼコウホネやヒツジグサなど水中植物が花を咲かせ、浮島がオゼアヤメ、カキツバタなどの花を見せて浮かんでいる。この浮島の成因等も学習教材としては面白いものと思う。 沼の周囲にはソウシカンバ、シラカバ等、さらにコメツガ、オオシラビソ、エゾマツ、ヒメマツ等の亜高山帯樹木が見られ、燧ケ岳、至仏山を登るとハイマツなどの姿が見られる。 植物の垂直分布の様子が観察できるのも尾瀬の特色であろう。特に至仏山では蛇紋岩植物といわれるものが多く見られる。一九五五(昭和三十)年ごろまでは、この登山道でサルオガセが風にゆれているのが見られたが、今は絶滅したのが残念である。同じくアヤメ平も荒廃したが、有識者の指導で村民や尾瀬高校の生徒諸君の努力により復元に向かいつつあるのはうれしい。 山岳では急激な天候変化がある。尾瀬を訪れる際には十分な準備がほしい。そして、山小屋に一泊し、朝夕の尾瀬を体験してほしい。 (上毛新聞 2008年9月9日掲載) |