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元藤岡市立東中学校長 除村 晃一(藤岡市下大塚)


【略歴】群馬大卒。理科の教諭として教壇に立ったほか、県教委で管理主事を務めるなど主に人事職を担当。西部教育事務所長や藤岡市校長会長を歴任した。




学校の活性化

◎教師魂を持ち敢然と



 現代の教育は“ゆとり”ではなく、“ゆがみ”の中にあるように感じている。また、銀行と学校は倒産しないといわれてきたが、いまやそうともいえない状況もある。

 規制緩和によって学校選択制や通学区の弾力化の動きが見られる。それは学校に初めて競争原理が入り込むことを意味する。そうなれば、従来どおりは通用せず、各学校は一層の特色ある学校づくり・魅力ある学校づくりに向けて努力していかなければならない。また、教育再生といわれているが、むしろ“再成”である。

 その中で自校としての創意ある取り組みは活性化の切り札になる。踏襲に前進はなく、リスクを恐れたら活性化はできない。教師の資質の向上も声高に叫ばれている。“ゆがみ”を認識しつつ、学校(教師)は体験したことのないうねりの中であえぎながら日々奮闘している。組織としての学校力を高め、創意工夫をしながら授業力や教師力の向上に努めている。その努力は子どもの人間力の育成になる。

 教師の意識変革も不可欠であり、質的転換としても「授業から学習へ、教えるから学ぶへ、効率から効果へ、指導から支援へ」である。支援とは手を差し伸べることであり、後押しをすることである。エデュケーションとは出産時に赤ちゃんを取り上げるという意味であると聞く。産む方も赤ちゃんを取り上げる方も必死になることによって分かる授業、教師が助産師のような心を持った授業が期待されている。

 また、日本の教育は自動車の運転免許取得の際の学科試験に似ているといわれる。試験が終わればすぐに忘れてしまいがちであり、確かな学力、はがされない学力の必要性がある。現在は子どもが“学びから逃げている”“学ぶ意味を見いだせていない”ことが大きな問題である。したがって、学ぶ意欲を育て、学ぶ力を伸ばすことは現代の教育の喫緊な課題である。

 世の中は日々刻々と変化している。教育も変化への積極的な対応である。“日に新たに”であり、“求めて、止やまず”の姿勢である。学校(教師)が受け身になったり、自信を失ったら活性化しない。前を見て、足元を見て責任ある教育を力強く展開していかなければならない。教師魂を持って、この難局に敢然と立ち向かうのはプロとしての教師一人一人の責務である。確かに、現状は逆風であるが、発想を変えてそれを追い風にすればよい。むしろ、変革の時だからこそやりがいがあると考えたい。

 いまや学校(教師)は正念場である。学校の一層の活性化に向けて、一人一人の教師の“ひたむき、ひたすら、ひとすじ”の三つの“ひ”(火でもある)が期待される。そして、いまや管理職の出番である。



(上毛新聞 2008年8月26掲載)