視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎地球の危機知る場に 館林市にある田中正造記念館には、小中高校生が夏休みに入ってから百人近く来館した。これら若者たちは、果たしてどんな感想をもって帰られたか、私は知りたい。熊本県水俣市にある水俣資料館を訪れた宮崎県の十五歳の中学生が、「水俣病は僕たちに訴えている。僕たちはその訴えを感じとり、考え続け、これからの世の中のために生かさなければならないと思う。もう二度と水俣のような悲劇を繰り返さないために」と、新聞に投書していた。私はこれを読んで、若者たちは真実に触れると感動する、という事実をあらためて認識した。 昨年の八月十五日、館林市の最高気温は四○・二度を記録した。これが当日、わが国の最高気温であったため、館林は「日本一暑いまち」としてニュースになった。それに起因するのか、市の広報によれば、今年は『日本一暑い館林市ほっとする〜大作戦』と称して、熱中症を予防するための「暑さ対策セミナー」を開催。「緑のカーテン」や館林まつりなどでのドライミストの設置など、猛暑でも快適に過ごすための事業を展開しているという。 館林市は、「田中正造環境学習館」開設を研究するプロジェクトチームを発足させたと聞いているが、その後の動きがよくわからない。そこで、私の考えを率直に述べたいと思う。 この学習館は、館林市の暑さ対策を考える、基本的視点を学ぶ場所にしたい。館林の猛暑は、世界の平均気温の上昇、即ち地球温暖化の反映であるから、その原因と現状について理解する必要がある。専門家は、地球温暖化は温室効果ガスの濃度の影響であるという。その危機的状況を認識して、温室効果ガスの大幅削減に取り組むことは、今や一刻の猶予も許されない人類の課題である。私が館林につくってほしいと願う学習館は、このような地球温暖化の基本的な事項が学習できる場所、地球の危機的状況が実感できる学び舎(や)、表現を変えれば「地球教室」ということになる。 NPO法人の記念館は、鉱毒事件について学習する場である。その内容は、鉱毒問題の起こりと被害の実態、事件発生後の足尾銅山(古河鉱業)や政府の対応など、その真実に触れる。公害は、環境破壊の最たるものであるから、足尾鉱毒事件の学習は環境学習の基礎である。 足尾鉱毒事件は公害の原点といわれているが、なぜか。明治以降、各地で起こった大きな公害問題、例えば四大公害といわれる熊本県や新潟県の水俣病、富山県のイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどの問題点が、足尾鉱毒事件の中に多く含まれているからである。公害の原点が実感できる学習館にするには、現在の条件を大きく変革しなければ、と私は思う。 (上毛新聞 2008年8月22掲載) |