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書家 小倉 釣雲(前橋市上新田町)

【略歴】本名・正俊。東京学芸大書道科卒、同専攻科書道修了。県内の各高校で書道を教える。毎日書道展会員、県書道協会理事・事務局長、上毛書道30人展運営委員長など。



総文祭

◎ 指導者を育成しよう

街中で「全国高校総合文化祭群馬大会(ぐんま総文)」の桃太郎旗が目につきます。私が教職について間もなく始められ、いつかは群馬で、と思ってきた総文祭。三十二回目を迎え、群馬での開催が実現したことを実感しています。

 私がかかわってきた書道部門も、この時が来るのを分かりながら退職補充もされず、人数が一桁(けた)となった専任教師、臨時的任用教員(地公臨)、非常勤講師、そして生徒たちとで時間をかけて準備をしてきました。ぜひ、一人でも多くの皆さんにおいでいただきたく、書道部門を紹介します。

 メーンは、全国展です。各都道府県より選抜された三百二点が来月六日から十日まで県庁・県民ホールを中心に展示されます。全紙、二四〇×六〇センチ、二四〇×九〇センチと、県展の公募をしのぐ大作です。その技術の確かさと若者のエネルギッシュな書は来場者を驚かせ、楽しませます。少々残念なのは、ここ数年、原寸臨書が増えていることです。あれだけの臨書力の上に立つ自己表現を、ぜひ見たいものです。

 全国展は各県一人の審査員により審査され、その結果を基に全日本高校書道教育研究会の中村好男理事長の講評会が行われます。同時開催の地元企画展は、萩原朔太郎、山田かまち、星野富弘の詩を、三者の出身地域の高校生二百五十一人が一年以上かけて詩の読み込みと書作に励んだ多彩な作品で表現します。

 部門開会式は八日、グリーンドーム前橋のサブイベントエリアで行われます。司会進行をはじめ、実施行事はすべて高校生の手によって進められます。式後は開催県の文化や特産を利用した書作での交流会となります。群馬といえば「ダルマ」です。ダルマの顔に絵付けをし、背面に座右の銘などを揮毫(きごう)します。さらに群馬らしく、日本三古碑の一つ「多胡碑」(吉井町を中心に現在、国宝にと運動中)が、碑と同材の多胡石の石板二〇×二〇センチに県内の高校生八十人が一字ずつ臨書し「昔を語る多胡の古碑」が高校生の新感覚で再構築された大碑となります。

 近年開催の静岡、徳島、青森、京都などの総文祭に参加して感じたのは、たくさんの高校生が真剣に伝統芸術を理解し、民族の文化として継承しようと努力していることです。群馬においては、先の大戦後すぐに教育書道展が立ち上げられ、以来綿々と続けられてきました。今年で六十二回目を迎え、開催市の前橋をはじめ十二市から市長賞と教育長賞が授与されることになりました。こうした行事を発展させ、子供たちが芸術に親しみ、文化を理解し、継承していくためにも、指導者の育成と活躍の場の提供が切に望まれます。





(上毛新聞 2008年7月30日掲載)