視点 オピニオン21 |
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◎美術館をぜひ造って 近代の群馬県出身の画家といえば、山口薫、福沢一郎、鶴岡政男の名前が浮かびます。その中でも個人的には山口薫の作品に魅力を感じています。今回は山口薫の美術館をぜひ造ってもらいたいというオピニオンです。 山口薫は一九〇七年に箕輪村(現在の高崎市)に生まれました。今年で生誕百年を過ぎました。改修が終了した群馬県立近代美術館で、九月六日から回顧展が開催されるようです。 山口薫の絵はいつ見ても飽きることがありません。時代の流行に迎合していないから、古くなるということもありません。そこには深い詩情と豊かな色彩が溢(あふ)れています。群馬の風景をモチーフにしたものも多いのも特徴です。 山口薫の絵を初めて見たのは高校の美術室でした。とても大きな絵で、画集で調べますと、五一年作の「野の宿」であったような気がします。大胆な構図の横たわる人物の絵でした。その絵は見るたびに喜びを与えてくれたものでした。美術の方面に進ませてくれたきっかけの絵の一つです。 彼は六十歳で芸大教授在職中に亡くなっております。私が芸大に入学する前でしたので残念ながらお会いしたことはありません。 当時も大変人気のあった画家であったため、作品の多くは分散してしまっているようです。もちろん群馬県立近代美術館にも数多くあるようですが、山口薫美術館と名のるには至らないようです。 私の専門の彫刻家のことをいえば、朝倉文夫と平櫛田中の二人は出身地と晩年の住居が美術館になっています。この近代の二人の彫刻家はもちろん大変優れた作家ということでもありますが、美術館のない作家よりも美術館があるほうが歴史として検証しやすく、また記憶に残りやすいように思います。山口薫は当然それに値する作家であると考えます。 群馬県を代表するもう一人の画家、福沢一郎は富岡市に美術館ができました。いろいろな問題もあるかと思いますが、関係各位の協力でなんとか群馬県立近代美術館に山口薫美術館ができればと夢想する次第です。 ところで前回(五月二十六日付)のこの欄にオークションで話題となった運慶作と思われる大日如来坐像をぜひ公開してくださいと書きました。 実は現在、東京国立博物館で九月二十一日まで展示されています。素早い対応に胸躍る気持ちで見てきました。決して大きな作品ではありませんが保存状態も悪くはなく、すばらしいものです。東京にお出かけの折にご覧くださると良いと思います。 (上毛新聞 2008年7月28日掲載) |