視点 オピニオン21
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上武大ビジネス情報学部准教授 花田 勝彦(高崎市大橋町)

【略歴】 京都市生まれ。早稲田大卒。エスビー食品を経て、2004年から現職。アトランタ五輪1万メートル、シドニー五輪5000メートル、1万メートルの日本代表。アテネ世界陸上マラソン日本代表。

夏の合宿

◎理解し考えて食べる

 うっとうしい梅雨が明け、今年もまた暑い夏がやってきた。地球温暖化の影響もあって、八月ともなれば日中の気温が三五度を超える日も出てくる。駅伝部はそうした暑さを避けるため、新潟県の妙高高原や、県内では尾瀬岩鞍や榛名湖などの高地で合宿を行っている。高地は朝夕が比較的涼しく、走る環境としてもアップダウンが多いので、箱根駅伝を目指した足作りには最適だ。

 合宿先での宿舎を決める際に、重要視しているのは風呂と食事である。合宿期間中は練習内容もハードになるため、普段よりも疲労の度合が大きい。充実した合宿内容にするためには、ゆったりと入れるような浴槽と、バランスの取れたおいしい食事は不可欠だ。特に食事は、トレーニングによって疲労した筋肉の修復に重要なので、練習内容を事前に連絡して献立を組んでもらったりしている。

 合宿中の食事は全体でとることが多いが、食堂にテレビがあってもつけないことにしている。それは食べることに集中してほしいからだ。競技者であれば、並べられた食事を見て、どんな食材が使われているかを理解し、考えて食べることが大切だ。自分の体に必要な栄養素が足りなければ、補食やサプリメントで取るなどの工夫も必要で、その差が合宿後半の走りにも表れてくる。

 また食事の時間は、選手同士が顔を見合わせる場であり、貴重な情報交換の時間帯でもある。その日の練習内容やお互いの体調などを話すことで、選手同士の親睦(しんぼく)も深まる。もちろん、話に夢中になって食事に集中できないようでは駄目だが、リラックスしたムードで食事をすることで明日への活力が生まれるはずだ。

 チームによっては、寮の食事も栄養管理士に任せているところもあるようだが、うちはそこまではやっていない。プロ選手であればそうした環境は必要だが、学生のうちは自分なりに考えて工夫することも大切だ。ただ与えられた物を食べるのではなく、自分に何が必要なのかを考えて食べることが、選手としての成長にもつながる。

 駅伝部では、食事の大切さを知ってもらうために、専門の方にお願いして年一回は栄養講座を行うようにしている。今年も先月下旬に行ったが、選手たちの関心は高く、講座終了後には講師の前に質問の行列ができた。

 私自身はというと、選手時代に比べて五キロ近く体重が増えた。同世代の指導者に比べるとやせている方だが、ランナーらしからぬ体になりつつある。たまに選手とも一緒に走るが、「監督、どうしました? 故障ですか?!」といったことにならないように、トレーニングはもちろんだが、食事にも気をつけていきたいものだ。






(上毛新聞 2008年7月20日掲載)