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美原記念病院看護部長 高橋 陽子(伊勢崎市宮子町)

【略歴】 伊勢崎高等看護学院卒。美原記念病院に入り、2004年から看護部長を務めている。06年からは伊勢崎敬愛看護学院で在宅看護論を教えている。

チーム医療

◎患者・家族も輪の中に

 わが国は急速に超高齢社会が進行し、高齢化に伴う病気の重症化、複雑化などの問題が顕在化し、医療に対する社会のニーズは大きく変化してきている。このような状況下においても、医療機関は常に質の高い医療を提供することが求められる。そのためには、従来の縦割り医療ではなく、横断的な多職種の医療専門職の協働アプローチ、すなわち「チーム医療」の実践が不可欠であると思う。

 一般に、「チーム医療」とは、医師、看護師、薬剤師、栄養士などの専門職がそれぞれの専門知識を生かし、協力して患者の治療にあたるとされている。しかし、私たちの考える「チーム医療」は、これらの専門職だけではなく、患者・家族もチーム医療の一員であるというものである。

 つまり、患者・家族には、私たち医療従事者と同じ輪の中の一員であると認識していただき、互いに協力して治療がなされなくてはならない。しかし、そこで提供される医療には、単に病気を治すばかりでなく、どのようなプロセスで治療が行われているか、あるいは精神的、社会的な側面も含めた対応が必要なのではないか思う。そのことが医療の質に大きく影響してくることを日々実感している。

 障害をもって退院される患者にとって障害の受容は難しいテーマである。患者の日々揺れ動く心に対して、真正面から向き合って新たな生活を再構築していけるように、それぞれの専門職が専門性を発揮し、支援していくことが重要である。

 このような医療現場で、専門職が専門性を発揮するためには、お互いの独自性を尊重し合うことが必要であり、教育段階から「チーム医療」に関する理解を深めることが求められる。最近は、「チーム医療」教育に積極的に取り組んでいる大学も多い。県内の大学においても九年前より、複数の学部間の教育連携によるチームワーク実習の教育プログラムが開設され、異なる学部の学生たちに職種間の相互理解と連携、協働できる能力を身につけさせる試みが実施されている。

 先日、当院で、医学、看護学、検査技術、理学療法、作業療法学専攻の学生たちがチームワーク実習として積極的に取り組んでいる場面を目にした。輝かしく真剣なまなざしの彼らは、将来の医療を担っていく若者としてとても頼もしく、大変うれしく感じられた。それぞれの専門職の教育課程の段階から、職種間の相互理解と連携、協働できる能力を身につけさせることは、必ず質の高い医療の提供につながると確信した。チームワーク実習に取り組む学生たちも、その時、「チーム医療」の一員として私たちの仲間なのだと思った。






(上毛新聞 2008年7月19日掲載)