視点 オピニオン21
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雑誌編集者 吉田 泰章(東京都大田区)

【略歴】 伊勢崎市生まれ。明治大卒。エコ&ナチュラルな情報を企画編集するアクアパパ代表、ライフスタイル雑誌「ナチュラルスタイル」(不定期刊)編集長を務める。

真剣さのネットワーク

◎尊敬や思いやり学ぶ

 時々、デパートやショッピングモールに買い物に行きます。行けばそれなりに楽しいのですが、同時に「日本社会はこれでいいんだろうか?」と疑問を感じることもあります。なぜなら、その空間全体のほとんどが、何十年後、百年後の未来を見越して物作りをしているように見えないからです。今だけ儲(もう)かればいい。何年かやって流行(はや)らなくなったら変更すればいい…。そんな目先のことだけを考えて動いている気がしてならないのです。

 真剣に作ること。真剣に売ること。そして、真剣に買うこと。命がけといっては大げさかもしれませんが、そのような真剣さが社会全体から薄れている感じがします。私は真剣さこそ、成熟した社会の第一歩であり、多くの問題を解決する鍵になると考えます。

 消費社会を考えるとき、じつは誰もが作り手であり、売り手であり、そして買い手なんだと思います。作り手は、買い手がいて初めて作ったモノがお金になります。売り手は、作り手がいて初めて商品を売ることができ、買い手がいて、初めてお金を得ることができます。そして買い手は、何か(労働力など)を売って得たお金があっても、作り手が商品を作って、売り手が商品を売らなければ、お金があっても買うことができません。

 自分が売り手、買い手、作り手になったとき、それぞれの立場で、真剣に作り、真剣に選んで、真剣に売って、真剣に買って、真剣に使えば、消費の仕組みが変わり、世の中は大きく変わるはずです。

 現代、とくに日本の消費社会は、いかに楽をしてゲットするか…に関心を奪われすぎている感じがします。

 本当の「楽しさ」とは、「楽(ラク)」をすることではなく、真剣さの先に味わえる「喜び」に存在するものなのではないでしょうか。生活の中で、リラックスすることは大事ですが、真剣な集中力があって初めて「弛(ゆる)み」は感じられるものだと思います。そして、リラックスして弛緩(しかん)するからこそ、今度は真剣な極度の集中も可能になるのだと思います。そのメリハリやバランスが、日々の楽しさを生むことにもつながるのだと思います。

 自分や愛する人が、同じ作り手であり、売り手であり、買い手であり、使い手であることを意識して真剣に取り組んだら、相手のことも同じくらい大切な存在だと感じられるはず。一度それを実感したら、偽物なんて絶対に作れないし、売れなくなるはずです。

 そのような大人の真剣な生き方に接することで、子どもたちは人生に対する真剣さや愛情を肌で感じ、安易な消費や破壊をしないようになり、人や自然に対する尊敬や思いやりを学ぶことができるようになるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2008年7月13日掲載)