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大泉町社会福祉協議会会長 阿部 忠彦子(大泉町丘山)

【略歴】 元邑楽高校PTA会長、元連合群馬館林地協議長。日本酒指導士師範。現職のほか、大泉町サケと遊ぶ会顧問、大泉町18区長。

日本酒

◎適量なら人生の潤滑油

 「日本酒はアルコール類の中では糖分が一番多い。だから焼酎にしている」「健康のために赤ワインにしている」といった話を、最近よく耳にします。

 確かに、日本酒はアルコールの中では高めですが、一合(百八十cc)でもわずか数ミリグラムにすぎません。糖分のことを考えれば、ご飯一杯やうどん一杯の方がその数十倍も糖分を含んでいるので、むしろご飯や麺(めん)類などを控えた方がはるかに効果的といわれます。

 一九八一年にイギリスとアメリカでほぼ同時に飲酒と寿命の統計研究が発表されました。イギリスのマーモットは四十歳以上の公務員千六百人を十年間観察、アメリカのクラッキーは四十五歳以上を十年間観察した結果ですが、結論は同じでした。

 この研究によると、全然アルコールを飲まない人も、多量に飲酒する人も、適量飲酒の人たちに比べると、死亡率が高くなっています。

 これはU字形曲線といいます。まったく飲まない人たちの死亡率が高いのは心筋梗塞(こうそく)のためです。これに対し多量に飲酒する人は心筋梗塞が少ないのですが、肝障害や悪性腫瘍(しゅよう)などが多くなっています。

 飲酒の適量に個人差があるのは当然です。しかし、その差は米英の両調査では約十グラムから五十グラム程度となっています。要は価格や種類にとらわれず、親しい仲間や家族と楽しく愉快な雰囲気で飲むことが大切です。一日の疲れを解きほぐすことができれば、気分が爽快(そうかい)になってリラックスした毎日を、いや充実した人生を送れると思います。

 マスコミを含め各種の情報に左右されず、自分が飲んでおいしいと思う日本酒が、その人に合った銘柄です。好みは人それぞれ。だから、いろいろな日本酒があるのです。

 人生に潤いを感じ、長寿を楽しみ、幸せを満喫できるのは人生の潤滑油である日本酒があるからです。現在、国内の日本酒はどの蔵の製品でも世界のトップ水準です。あとは皆さんのお好み次第です。

 皆さんのすぐ近くにもきっと、好みにピッタリの日本酒があるはずです。愉快で楽しい仲間が大勢いるはずです。いくら平均寿命が伸びても、心身ともに健康で過ごせなければ意味がありません。

 国や県市町村の医療費、介護費用などは今後急激に増えることが確実で、何としても歯止めをかけなければなりません。心身ともに健康であれば、この難問解決のための大きな力になるでしょう。

 急速に進む少子高齢化に対応するためにも、日本酒の適量飲酒に努めましょう。日本の将来のためにも。






(上毛新聞 2008年6月27日掲載)