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明治大商学部教授 水野 勝之(千葉県浦安市)

【略歴】 千葉県出身。早稲田大大学院修了。商学博士。北九州大助教授を経て、明治大商学部教授。明治大では、嬬恋村など複数の地域連携事業の責任者を務める。

嬬恋アグリカレッジ

◎新しい教育の形発信

 今月一日、明治大学では、嬬恋村との共同事業である「二〇〇八年度・第一回嬬恋アグリカレッジ」を開催しました。五月四日付の本欄でご紹介したNPO「好きです 嬬恋」の後援をいただきました。嬬恋村の方々の指導の下、明治大学生および千葉県浦安市の小中学生が田植えとトウモロコシの種植えを行いました。

 以前述べましたが、一昨年より私の研究室では、嬬恋村半出来地区の畑をお借りして稲と野菜を作ってきました。目的のひとつは、収穫した農産物で商学の研究を行うため、もうひとつは農作業に携わること自体を研究に活用するためです。

 一昨年は収穫された野菜を、東京の千代田区にある「ふれあい神田市場」(明治大学商学部と嬬恋村の共同経営)でのイベントや、千代田区の天下祭りなどで学生が販売し、その商学的成果の検証と、嬬恋村と千代田区両地区の地域活性化を研究しました。

 昨年は、学生による子どもたちへの金銭教育を行うにあたって、野菜やもち米で販売体験を行い、教員や金融機関が行う金銭教育とは違う、新たな経済教育を生み出しました。

 さて、今年の事業ですが、大学生は三十人、浦安市の子どもたちは十五人の参加でした。今年の事業の特徴は、大学生が主体となり子どもたちに体験を指導する、ということです。学生たちが班分けを考え、学生と子どもたちが交ざり、途中のサービスエリアでは班ごとの行動として安全・安心に気を配りました。

 嬬恋村では、畑を管理している方をはじめ、嬬恋村の政策推進課の方々、また後援をいただいたNPO「好きです 嬬恋」のメンバーが駆けつけてくださいました。畑の近くの公民館で昼食を準備してくださり、皆で食事をしたあと、田植え、トウモロコシの種植えを行いました。

 順調にいけば、夏にトウモロコシ、秋にお米が収穫できます。これを、一昨年とも昨年とも違った形での研究や金銭教育につなげていくのですが、それも学生が主体です。学生がどのような商学研究や教育効果を考えてくるか楽しみにしています。そして、今年も社会に新しい教育の形を発信できればと考えています。

 今年からの農業体験は引き続きNPOと連携して行い、嬬恋村の方に農業指導をいただくため、「嬬恋アグリカレッジ事業」としました。これは、地元の皆さんの農業の知恵・知識をお借りし、学生は子どもたちに対して先生役を務め、農業体験を行う形をとります。

 先に述べました新しい教育の形は、農業指導を受けることでの地域活性化と、実践教育を重視するこれからの新しい大学教育と、子どもたちが大学生に教わるという新しい地域の教育という三位一体の成果のなかから生まれてくると考えております。






(上毛新聞 2008年6月25日掲載)