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県立ぐんま天文台観測普及研究員 浜根 寿彦(高山村中山)

【略歴】 東京都杉並区出身。1997年から県職員。県立ぐんま天文台の発足準備に携わり、99年の開館時から現職。彗星(すいせい)の観測的研究など惑星科学が専門。

共に学ぶ

◎「ひとり立つ」の基本

 「自分で気がついたこと、見つけたことを、誇りに思っていいんだよ」と、天文台に来る子供たちに機会あるごとに言う。「周りの人たちから『そんなことも知らなかったの』『そんなの当たり前だよ』と言われたり、本に載っていたりしても、がっかりすることはないんだよ。だって、誰にも教わらずに、何も見ずに、自分の力で見つけたことなんだから、世界で初めての発見をしたのと同じことなんだもの。だから、自分にはこんな力があるんだって、誇りに思っていいんだよ」

 「思ったこと、考えたことを言葉にしてごらん。絵にしてごらん。みんなに説明してごらん」と、天文台の子ども天文学校「少年少女研究員」に参加する小中高校生に言う。学年の違う子供たち五、六人のグループをいくつかつくり、天文現象を協力して観測する。参考資料を探したり、アイデアを出し合い話し合ったりして、なぜだろうを探究する。個人やグループで、あるいはグループ同士で。

 そうしているうちに、知っていると思っていたことが分かっていないということに気がついたり、不思議に思っていたことが分かってきたりする。「○○してみてごらん」は、ひとりではたどり着けないかもしれない到達点に、子供たちが共に学び、学び合いながらたどり着けるようにするためのおまじないである。

 共に学ぶというと、考えたり調べたりといった知的な作業を人に頼ってしまうように思われるかもしれないが、そんなことはない。話し合うことや自分の考えを説明すること、分かったと言えるようになること、そうしたことすべてが自分とは違う相手(他者)を意識した営みであって、一人一人が「ひとり立つ」営み、知的な真剣勝負なのだ。

 実はこれ、科学者が常日ごろ行っていることにほかならない。天体観測という科学の営みを体験することで、少年少女研究員の子供たちは「ひとり立つ」ことを実感し身に付けていくのだと思っている。

 「自分を誇りに思う」ことや「共に学ぶ」ことは、「ひとり立つ」ことにつながる。子供たちが自信を持ち、独創性を発揮し、個性を伸ばすための基本だ。

 独創性や個性は一人一人の好きに任せておけば伸びるという考えもあるようだが、それは違う。独善や身勝手を独創性や個性とはき違えてしまうのではなかろうか。「ひとり立つ」厳しさを味わう、つまり、自分というものを人と人との間で認識した先に独創性や個性はあるものだと思う。

 天文学という科学は、手を伸ばせばすぐに体験できるところにある。この特徴を生かして、子供たちの独創性や個性を伸ばすという天文台の設立理念に沿った活動を進めていきたい。






(上毛新聞 2008年6月21日掲載)