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◎視野を広げてみよう じーちゃんと娘の会話。 じ‥「三匹のこぶたがいました。一匹のこぶたが迷子になってしまいました。こぶたは何匹になったでしょう?」 娘‥しばし考えて「さんびき〜!」 じ‥「ん〜?」。右手で二、左手で一をつくり、「三匹いるだろう? 一匹迷子になると?」と左手を離して右手の二を強調。 娘‥「さんびきでしょう」 じーちゃんはここで、娘には引き算はまだ難しいと判断。そこで、 母‥「じゃあさ、お家(うち)に三匹のこぶたがいます。一匹のこぶたが出ていったら、お家には何匹のこぶたがいるでしょう?」 娘‥…「にひき〜!」 なんでだ? という顔のじーちゃんに解説。三匹のこぶたは、一匹迷子でも、三匹。三匹のこぶたが「家に」いて、一匹出ていったら、「家の中には」二匹。この違い、わかります…よね?! 私たちは「普通」「常識的に考えて」、じーちゃんの出した問題が「引き算の問題だな」と考えられます。 ところが、私が支援している、自閉症という障害がある人の中には、その「普通」「常識的に」が苦手な人がいます。彼らは、物事をいつもきっちりと正確にとらえ、考えようと一生懸命です。時に、その基準で、人の物言いまで指摘したり訂正したりしてしまうことも…。「三匹のこぶたは、どこへ行こうが三匹いるでしょう!」「ちゃんと、家に幾人いるかと聞いてくれればわかるのに…」 「おじいさん、それは、言い方が正しくありません」なんて感じです。四歳の娘が言うなら、おませさんのかわいい戯(ざ)れ言(ごと)でも、就職して、職場の同僚や上司にそんなことを言ってしまったら…。「あなたの言っていることはおかしいです」「ちゃんと言わないからできないんですよ」 口うるさい、非常識なヤツと言われて疎まれてしまうのがオチです。でも実は、そのことで、とても深く悩んでいる人たちがたくさんいます。どうすれば「普通に」「常識的に」うまくいくのか、わからないのです。 そんな彼らは、私たちとは違う物事のとらえ方をする脳を持っています。できるだけ具体的に正確に物事をとらえるように働く脳です。その脳の働き方を、ヘン、おかしい、ダメと思いますか? 自分とは違う物事のとらえ方、考え方をする人…。ちょっと視野を広げて、地球規模で考えてみてください。「違う」人たちがたくさんいますよね。 私たちは、自閉症の脳を持つことを「障害」とネガティブにとらえずに、「自閉症の文化」の中で生きることとポジティブに考えていきたいと思っています。 異文化コミュニケーション。最初は通訳付きが当たり前。私たちと一緒に、彼らの世界へ行ってみませんか。 (上毛新聞 2008年6月12日掲載) |