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◎志の高い人材育成へ わが国の高齢化率は、二〇〇五年にイタリアを抜いて世界最高になった。20・2%であり、五人に一人は高齢者という社会。文字通り「世界のどの国も経験したことのない」高齢化を迎えたわけである。 こうした状況の中で「国民の医療に対する安心・信頼を確保しつつ、医療費の伸びを経済財政と均衡がとれたものとする」との観点から医療制度改革関連法が成立した。これに基づき、一一年度末までに、現在ある療養病床三十八万床を十五万床に削減することが決定している。この療養病床再編により、今後、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどの施設や在宅への医療支援サービスはますます高まり、各施設、在宅とも利用者の尊厳ある生活を支えるため、看護職員はさらに力を発揮することが求められるようになった。 しかし、多くの施設では、看護・介護職員の力にばらつきがあり、どのように知識と技術を身につけさせ、施設利用者のニーズに対応したらよいのかと悩んでいる管理者も多いのではないだろうか。その背景として、これまでの施設は、「生活の場」としての性質を有してきたが、現在、多くの施設は認知症の方が占めるようになり、同時に利用者の状態が重症化し、「終(つい)のすみか」として「看(み)取り」のニーズも年々高まっていることがある。 このような状況において、看護職員は、質の高い「生活を支える看護」「予測した看護」「看取りの看護」を利用者に提供しなくてはならない。そのためには、現場における個々の看護・介護職員のスキルアップのための教育が必要であろう。その意味から、また、看護職員がその専門性・独自性を十分に発揮するためにも、看護リーダーの存在は大きいと思われ、看護リーダーとしての人材育成が求められる。 私の考える施設や在宅療養の場における看護リーダーとは、専門看護師や認定看護師のことで、看護のスペシャリストである。専門看護師や認定看護師の資格取得には一定年数の経験と専門的な教育を受けることが必要であり、そのハードルは高いものがある。現在、専門看護師や認定看護師の多くは病院に勤務しているが、病院にとどまらず施設、在宅に出向き、その専門性を積極的に発揮し、より質の高い看護、介護を提供することにより、患者一人一人が「最期までその人らしさ」を保ち、生活の質が高められると確信している。 私は、看護管理者として、志の高い看護師が専門看護師や認定看護師の資格を目指すことを応援し、また、看護リーダーとなったならば、その力を十分に発揮できるような職場環境を構築したいと考えている。 (上毛新聞 2008年5月24日掲載) |