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◎盗らずに撮ろう山野草 「見てなんぼ?」というのが、われわれ森林・林業の世界。だから数多くの経験を積んだベテランにはかなわないところがある。森林という現場には多くの要素が秘められており、それらの集合の上に成り立つ現象について、その現場を見ていない者に伝達することは至難の業である。情報伝達の難しい仕事なのである。しかもせっかく現場に行っても写真もろくに撮らず、情報の共有を重視しない風潮があった。 技術的に未熟であったころは、せっせと写真を撮ってくるのだが、手ぶれ、ピンぼけ、露出不足などのオンパレードで使い物にならないのが多かった。当時カラー写真は高額だったので、遠慮もあった。 それから比べると最近のデジカメの発達はありがたい。枚数を気にすることなく、その場で出来栄えもわかり、スピーディーな画像化、保管に場所を取らず、検索が容易、印刷してよし、スライドにしてよし、修正可能、電子メールで情報共有もあっという間にできる。町の写真屋さんには誠に気の毒な話だが、こんなに多くの機能をすべて自分の手でできる。 電子化が進む世の中、身近な道具でカメラほど便利になったものはない。おまけに手のひらサイズのコンパクトときているのだから、いつも携帯して何でもいいから面白いと思ったものは躊躇(ちゅうちょ)なく撮ることにしている。いつもこういう写真があればいいな、こういう写真はないか、と求められたとき、ピッタリくるものがないという悲哀を感じることはもうなくなるだろう。 先日、私の同僚が山の伐採現場に行ったそうな。居合わせたおばちゃんが二人、「木を切って自然破壊をしているじゃない」と批判的。そこで同僚は、森林・林業の効用についてしばし説き、伐採が必ずしも自然破壊でないことを理解してもらった。 ところでおばちゃんが手にしていたレジ袋。それは何ですかと問うと、何と中から山野草の一種のエンレイソウが出てきた。その近くの山中でパクったらしい。林業の伐採行為をとがめるが、自分はそれでいいのかい? 世も末だ。 自然を求めて山に行かれる皆さん、ぜひレジ袋の代わりにデジカメを持っていってください。そして道ばたに咲いているどんな花でもいいから、逃さずに撮(盗(と)や採ではない)りましょう。これが意外と難しい。パソコンの画像というのは見栄えのするものだから、花の写真が上手に撮れていると実にうれしい。山野草を盗採してきて庭に植えてもほとんど枯れてしまうのが落ち。罪なことをせず、デジカメで撮影して、パソコンで保存すれば枯れることはない。これからの山野草収集はデジカメで行い、パソコンの背景に見事に咲かせてください。 (上毛新聞 2008年5月22日掲載) |