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◎人間らしく生きる社会 清水寺の貫主が選ばれた二○○七年「今年の漢字」の「偽」は、多くの国民の胸の中にストーンと落ちた。利益追求のために、消費者(国民)を騙(だま)し続けた企業があまりにも多かったからだ。文字の奧から「人を欺いてはいけない」と、戒めの声も聞こえる。消費者に垣根はない。俗にいう偉い人(金持ち)も、弱者といわれる人たちも全く同じだ。腹も立つし、あきらめもする。 一方、「年金」「雇用不安と低賃金」「少子化」「食の安全と自給率」など、社会問題化している現象はめじろ押しだ。「日本はどうなるの?」と、時には暗い気持ちになる。 「ワーキング・プア」が生まれたのは、日本の経済界に、モラルを忘れ、「パイ」の配分を誤った大企業もあるのが根っこといえる。社会を構成する重要な歯車である労働組合の責任も大きい。 「後期高齢者医療制度」の問題も、厚生労働大臣は「国家百年の大計で、こんないい制度はない」と言い切っているが、一つの理屈でしかない。ここしばらく、政治家といわれる人の中には、複眼でものを見ず理屈に走る人が多い。政治家も経営者も、人間らしい優しさ、思いやりを活動の原点にしてほしい。 あるときから私は消費者運動に首を突っ込むことになった。その運動は、子どもの健康を守りたいと願う人たちが立ち上げた「群馬食品の安全性を考える会」だ。事情があって今は休止状態にあるが、一九九○年に始まり、優れて行動的だった。活動内容は「ポストハーベスト農薬」問題に始まり、芽止めジャガイモの追放、安全な地産地消を掲げての学校給食問題への取り組み、悪名高き「遺伝子組み換え食品」拒否の闘いなどだ。 発足後一年半余りの間に学習会を二十三市町村九十五会場で開くなど、女性事務局長の行動はまさに獅子奮迅の勢いだった。会員も、最盛期の九八年には、千四百二十三人に達していた。 少し古いが、機関紙「ママ、急いでね!」(二○○一年七、八月号)の編集後記の一部を紹介する。 「遺伝子操作を施された人工遺伝子が生態系に拡散されれば制御は困難になり、動植物の生存に重大な影響を及ぼすのは明らかである。(中略)三四都道府県では、大豆、ジャガイモ、ネギ、ナス、人参など、多くのそ菜類が遺伝子組み換え作物の対象になっていると言う。(中略)地方自治体がそんな研究競争をする必要があるのだろうか、農民と消費者は、強く手を握り合って、一般の田畑での栽培を禁止するよう世論に訴えたい。自らの健康と子孫のために」 (上毛新聞 2008年5月15日掲載) |