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◎公共交通や自転車が鍵 地球温暖化の進行を危惧(きぐ)し、それを伝える者として、自ら試みていることがある。それは自分の撮影取材での足を、“できるだけ”公共交通機関と人力移動に変えることである。動物写真の撮影は非常に交通の不便な場所に行くことが多いので、それでは結構困ることも多いのだけれど、“できるだけ”と多少の幅を設けたことで、なんとかそれでやれてきている。主立った移動は電車や長距離バス、そして現地ではケースに入れて送っておいた折り畳み自転車を用いる。 このような移動を始めてすぐに感じたのが、今の日本は公共交通機関や自転車での移動が大変しづらい国だということだ。これが特に人口の少ない過疎の山村などに行くと際立っている。電車もバスも一日に二、三本しかない。しかもそれが大きな街に行くバスや飛行機に乗り継げない。そんな体験を何度もしている。そしてそのような土地で路上の車を見るとほとんどが運転手一人しか乗っていなかったりする。 自転車は大変便利な乗り物だが、世界中で日本の都会ほど自転車が走りにくい場所もないのではないか。歩道の中に自転車道を設けているので、歩行者が多くてとてもスピードを上げることができない。自転車は近所の買い物に使う程度のものとしか考えていないインフラなのだ。 ところがこれは逆に考えれば、公共交通機関を完備して、自転車などの移動を快適にしたインフラさえ整えれば、車の使用量は少なくなり、二酸化炭素(CO2)は削減できるということでもある。そのような政策が必要なのではないか。 車の使用はより不便にし、公共交通機関や自転車での移動が便利な社会。それをつくることが求められるのである。例えば、現在の車の車線は渋滞の有無にかかわらず減らし、代わりに独立した自転車道を設ける。歩行者がいない自転車道ならば時速十五キロから二十キロ程度で移動が可能である。通勤の足に十分に取って代われる。渋滞する車の横をスルスル走っていく自転車を見たら、車から自転車への移行は進むだろう。 また公共交通機関を併用することで自転車はより便利になる。現在、駅周りの駐輪問題に悩む自治体が多いが、それは駅までしか自転車が使えないからでもある。自転車ごと電車や地下鉄に乗れるような社会が、欧米ではとっくに始まっているが、日本もそれを見習う必要があるだろう。ラッシュ時の問題などは時間帯やフレックス勤務などで対応していけばいいことだ。 地球温暖化対策は不便な生活の押しつけや、そのようなスローガンの連呼では全く効果がない。そうした方が便利で、得な生活にすることが肝心だと思う。 (上毛新聞 2008年5月13日掲載) |