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◎女性も気軽に楽しんで 伊香保の魅力アップを目的に私を含む若女将(おかみ)四人で立ち上げた会社、伊香保おかめ堂本舗が中心となり、先月某日「お座敷遊び」をテーマに初めてのイベントを催した。私たちが発行するフリーペーパーの春号で「お座敷遊び」を特集したことがきっかけだった。 伊香保は、今も芸妓(げいこ)見番(芸妓さんの組合制度)が残る県内唯一の温泉地だ。その歴史は古く、最盛期には約百五十人もの在籍者を誇ったが、現在では三十人程度となった。 温泉の楽しみは、旅館・食事・お風呂だけではない。古くて新しい温泉のもう一つのお楽しみ「お座敷遊び」の魅力、そして芸妓見番の存在をもっと広く知ってもらいたかった。 イベントは、見番に一九五一(昭和二十六)年から在籍する芸歴五十年の千鶴子姉さんとちゃらこ姉さん、そして私たちの思いに賛同してくださった柳家紫文さん(都々逸を中心とした三味線などの芸で活躍中。東京在住)との出会いでコラボレーションという形の出演を取り付け、本番を迎えた。しかし、時間的・経済的余裕が主催側の私たちになかったため、伊香保芸者のお姉さんたちと東京在住の紫文さんは、当日が初対面となった。また、お座敷は酒宴が当たり前だが、今回はお茶。「盛り上がるだろうか…」。不安は尽きなかった。 私たちの心配をよそに、雨の中、お客さまが次々と到着された。ドレスコードを設けたわけではなかったが、和服のお客さまが多かった。私たちも場の雰囲気を少しでも盛り上げたいと全員着物でお迎えした。お座敷を楽しみ、雰囲気を味わう大人の洒落(しゃれ)た振る舞いを見た思いだった。やがて、広間に敷き詰められた五十枚もの座布団は埋めつくされ、立ち見も出た。 紫文さんの「賑(にぎ)やかし」というお囃子(はやし)とともに、お座敷はスタートした。お座敷には慣れっこのお姉さんたちも、五十人以上がしらふで見つめる中、芸を披露するのは緊張したに違いない。しかし、さすがはプロ。艶(つや)のある歌声と踊り、お客さまも参加しての遊びやエピソード紹介などでお座敷を盛り上げた。カッコ良かった。 お座敷には三味線の音が似合う。お客さまは手拍子で、笑顔で、時には体を揺らして楽しんでいた。おひねりも飛んだ。私は昔のお座敷を見たことがない。しかし、その再現を目の当たりにしたような錯覚で、ただうれしさがこみ上げ、涙が出た。最後は伊香保独自の手拍子「伊香保締め」でお開きとなった。お客さまが帰りしな口々に「二回目はいつですか?」とお声かけくださった。 お座敷というと男性の楽しみで、どこか敷居の高いものと思うかもしれない。実のところどうなのか、お座敷にいらしてその目でぜひ確かめてください。 (上毛新聞 2008年5月5日掲載) |